ブラック労働社会日本 イギリスの杉原千畝


長時間労働で睡眠6時間未満4割、主要国で睡眠時間が最も短い日本で多発する自殺・過労死・精神障害
国家公務員一般労働組合

NHKの報道です。
1日の平均睡眠時間 成人の約4割“6時間未満”
NHKニュース 11月19日 4時20分
1日の平均睡眠時間を厚生労働省が調査したところ、成人のおよそ4割が「6時間に満たない」と回答したことがわかりました。睡眠時間の妨げになっている要因では仕事や家事という回答が多く、厚生労働省は、背景に長時間労働や共働きの増加があると分析しています。
厚生労働省は、睡眠時間や健康状況などについて毎年アンケート調査を行っていて、去年11月に全国のおよそ3500世帯から回答を得ました。
その結果、成人の中で1日の平均睡眠時間が「6時間に満たない」と回答した人は39.5%と、前の年を2.9ポイント上回り、調査を始めた平成17年以降で最も多くなりました。
このうち、「睡眠時間が足りなかった」と回答した人は男性で34.6%、女性で39.5%で、「日中に眠気を感じた」と回答した人も男性で44.5%、女性で48.7%に上りました。
また、睡眠時間の妨げになっている要因を複数回答で聞いたところ、男性では「仕事」が37.7%で最も多く、次いで「健康状態」が14%でした。
一方、女性では「家事」が21%で、「仕事」が19.7%でした。
厚生労働省は、睡眠時間が短い背景には長時間労働や共働きの増加があると分析したうえで、「健康を維持していくために睡眠時間の十分な確保に必要な施策を検討したい」と話しています。
国立精神・神経医療研究センターの研究によると、ウィークデイに相当するわずか5日間の睡眠不足により、不安・抑うつ傾向が強まり、不安障害や気分障害うつ病)のリスクが高まることが分かっています。また、厚生労働省研究班が救命救急センターに運ばれた自殺未遂者を対象として行った調査によると、自殺者の平均睡眠時間は5時間と短いことが分かっています。
そうすると、睡眠時間が短いことは自殺のリスクにつながるのだろうと今回の厚労省「国民健康・栄養調査」の睡眠時間データでグラフをつくってみました。
上のグラフは、今回の厚労省調査の2015年の年齢別で睡眠6時間未満の割合(男性)と、厚労省「自殺対策白書」の年齢別自殺死亡率を見たものです。明らかに睡眠時間が短いと自殺率が高いということが分かります。
男性では睡眠の妨げになっている要因は長時間労働ですから、「過労死等防止対策白書」で紹介されている総務省労働力調査」の1週の就業時間が60時間以上の割合と自殺死亡率でグラフをつくってみたものが以下です。
長時間労働と自殺率の高さは相関しています。それから、過労死・過労自殺についてもグラフをつくってみたものが以下になります。
そして、下図にあるように、日本の睡眠時間はOECDによると男女ともに国際的に最も短くなっているのです。自殺・過労死・過労自殺精神障害をなくすためにも、心身の健康のためにも、長時間労働の是正は急務なのです。
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■ メディア
イギリスのシンドラーと呼ばれた人物を描く「ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち」が示す善意のつながり
杉本穂高 / Hotaka Sugimoto



第二次世界大戦のさなか、多くのユダヤ人の生命を救った人物と言えば、スピルバーグが映画にもしたオスカー・シンドラーが有名だ。日本にも杉原千畝という人物がいて、ユダヤ人救出のためにビザを発行し続けたのは有名だ。しかし、多くの生命を救うために尽力した人物は他にもいたのだ。
映画「ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち」はイギリスのシンドラーと呼ばれた、多くのユダヤ人の子どもたちを救った知られざる男のドキュメンタリーだ。総勢669人ものユダヤ人の子どもを、公的支援を受けず独力でチェコスロヴァキアからイギリスへ疎開させ、多くの命を救ったが、そのことが世間に知られるようになったのは、約50年後の1988年。彼は自分の行った行為を誰にも打ち明けようとしなかった。
偶然奥さんが屋根裏にあった資料を発見して、世に出ていくことになったのだが、自分でこれだけの偉業を誇ろうともしないのはなんとも謙虚だ。おそらく本人としては、取り立てて自慢するようなことではなく、当然のことをした感覚なのだろうか。それとも、もっと多くの命を救えたはずという恥や後悔の念が彼の口を閉ざしたのだろうか。
シンドラーのリストでのオスカー・シンドラーと同じく、いやあれほどに卑しく描写されているわけではないが、ニコラス・ウィントンも聖人君子として描かれていない。彼はロンドン証券所の仲買人だった。金儲け主義だっというわけでもないが、それなりに金を儲けることが好きな人物でもあった。彼が子どもの救出作戦に従事するようになるのは、友人の誘いでチェコスロヴァキアの難民キャンプを訪れたことがきっかけ。
それは彼の今までの人生の中で全く見聞きしたことのない過酷なものだった。そうした過酷な現実を見ないですむ人生を歩んできた人物なので、やはり大きなショックであったのだろう。ニコラスは子どもたちだけでも助けようと「キンダートランスポート」の準備を開始する。
強制収容所へ送られようとしている子どもたちを、イギリスへ疎開させる計画なのだが、ビザを取るにもイギリスでの里親も必要になる。旅券審査も入国のための書類も作成しながら、さらには里親探しまで、公的機関の支援なしに個人の力でやるのは相当な困難だったに違いない。
ニコラスは、終戦後は難民支援などの機関で働いた後、パリの銀行に務める。イギリスに帰国後に事業で成功を収め、慈善事業にも熱心だった。

子どもたちを救出した偉業が知られる前にすでに、長年の慈善事業に対して大英帝国勲章が授与されてもいる。
映画は、彼の人生を振り返るとともに、彼に命を救われた人々を探し出しインタビューもしている。彼に直接救われた人々だけでなく、その子や孫、救われた人の中には慈善活動に従事し、さらの多くの人を救っているという挿話も入れられている。本作の最も強いメッセージはそうした「善意のつながり」だろう。669人を助けたことで、彼らと彼女らに家族が生まれ、そこからまた新しい幸せが生まれ、善意も継承されていく。
ニコラス・ウィントンのキンダートランスポートは、パディントンの原作者にもインスピレーションを与えたという。「くまのパディントン」は名札をさげ、スーツケースをも持っているが、あの出で立ちは、原作者のマイケル・ボンドが小さい時に見た「キンダートランスポート」でやってきた子どもたちにインスパイアされたらしい。
人生、何が起きるかわからないとよく言うけども、自分の言動がどこでどんな影響を与えるかもわからない。人生には不思議な縁もある。これもつながりだ。
キンダートランスポートの少女 posted with amazlet at 16.11.24 ヴェラ ギッシング
未来社