安倍昭恵首相夫人が幼稚園において講演をしたような「印象のひも付」のされるイベントも存在しないし、籠池氏の役割は、「寄付依頼書に『安倍晋三記念小学校』の記載がある払込取扱票を同封して使用し」ないように指示をするところまでであり、副園長以下の幼稚園の職員が籠池氏の知らないところで残っていた用紙を使用したり、あるいは、他人に渡した用紙が籠池氏の知らないところで使われたかどうかまで、自己の体験事実として把握出来る立場にはなかった。

  ウ しかも、葉梨衆議院議員の場合には、書面の記載内容について質問をする際に、書面を見せることなく、場合によっては、書類を手に持ちつつ、内容を口頭で要約するだけで、書類の内容を確認する機会を籠池氏に与えることもなく、質問をしているが、このように、書面を見せることなく、書面の内容を問う質問は被質問者を混乱させ、記憶の喚起を難しくするだけであり、正確な回答をすることは期待し難い。

エ このように、籠池氏としては、記憶喚起のための時間が不足する中、午前中、午後と記憶を可能な限り喚起しつつ、自らの記憶にしたがった陳述をしたものであり、偽証をしたものではない。

(5)小括
   以上のとおり、籠池氏は偽証をしていない。

3 証人喚問自体について適正な国政調査権の行使と言えるかどうか疑義があること
(1)証人喚問に至る経緯に関する疑義
   そもそも、今回の証人喚問は、与党側が籠池氏の参考人招致すら拒否していたにも関わらず、籠池氏が安倍昭恵首相夫人から100万円を受領したことを述べた途端、自民党竹下亘国会対策委員長が即座に「首相に対する侮辱だ」と反応したことに端を発して決定されており、そもそも、国政調査権日本国憲法第62条)に基づく「国政に関する調査」を目的としたものではなく、一民間人に対する恫喝、口封じを目的とした「スラップ証人喚問」であるとの感が否めない。

(2)その余の関与者に対する対応についての疑義
   証人喚問を担当したのは衆参両院の予算委員会であり、国有財産の処分が重要なテーマである筈にも関わらず、借受け、買受けた側である一民間人の籠池氏が出頭義務、偽証の制裁の課せられる証人喚問であるのに対し、全国民の財産である国有地の借受け、売却等に関する意思決定に関与した上級公務員は偽証罪の制裁のない参考人に止まっていることは明らかに均衡を失する。