人類史上最大の錯誤、新自由主義を継続する日米政権

【政治】
70歳以上の医療費負担増 厚労省案、上限額段階的に

Tweet

2016年12月1日東京新聞 朝刊

 厚生労働省は三十日に開かれた社会保障審議会の部会で、医療保険制度の見直し案を示した。

医療費の自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」については、二〇一八年八月までに七十歳以上の負担上限額を段階的に引き上げる。

七十五歳以上対象の後期高齢者医療制度でも、

低所得者などの保険料軽減の特例措置を廃止する方針を示した。

同省は与党と調整し年内に決める。

実施が決まれば、高齢者に医療費と保険料の両面で負担増を求めることになる。 (中根政人)

 高額療養費制度では、医療費が月額百万円かかったと仮定した場合、七十歳以上で

年収三百七十万円未満の人の入院時の世帯での負担上限額(月額)を、現在の四万四千円から五万八千円に引き上げる。

年収三百七十万円以上の現役並み所得の人については、年収に応じて新たに三つの区分を設定。負担上限額は現在の八万七千円から最大二十五万四千円に引き上げる。

 外来受診時の負担上限額は、年収三百七十万円未満の人は現行の一万二千円から五万八千円に引き上げる。

現役並み所得の人は四万四千円から最大二十五万四千円に引き上げる。


 一方、低所得で住民税が非課税の人の外来受診時の負担上限額も、現行の八千円を一万〜一万五千円に引き上げる案を盛り込んだ。

 後期高齢者医療制度では、低所得者や元会社員の扶養家族など約九百十六万人の定額部分の保険料を最大九割軽減している特例措置を廃止して、本来の軽減幅に戻す案を提示した。

特例措置がなくなった場合、夫婦世帯で妻の年金収入が年八十万円以下の場合、夫の年金収入が百六十八万円以下の高齢者の医療保険料の月額は、

現在の三百八十〜五百七十円から千百三十円に値上げされる。
◆75歳以上の特例廃止へ

 厚生労働省がまとめた医療保険制度の見直し案は、高齢者に厳しい負担増となる内容です。 (鈴木穣)

 Q 見直しの理由は。

 A 高齢化による医療費増で政府は費用を削減したいのです。でも、受診を控える人が出ないよう注視が必要です。

 Q たとえば、どんな制度を見直すの。

 A 医療費の負担を軽減する高額療養費制度です。

月ごとに決めた自己負担額の上限を超えた費用は、医療保険から支払ってくれます。七十歳以上は入院で一万五千〜約八万円、外来で八千〜約四万四千円が自己負担の上限。治療を受けて高額な出費を強いられた時の重要な支援策になっています。

 Q どのぐらい負担を重くするの。

 A 七十歳未満に比べ、七十歳以上の自己負担は低く抑えられています。これを現役並みに引き上げる案で、収入の高い人の負担を増やします。見直し案が示された会合でも、委員から「負担能力に応じた制度に」との意見が出ました。

 Q ほかの負担増は。

 A 七十五歳になると、全員が「後期高齢者医療制度」に加入します。二〇〇八年に制度を始めた際、高齢者の負担に配慮し保険料を軽減する特例措置を導入しました。保険料は収入に比例し額が決まります。

もともと軽減措置があるのですが、特例でさらに軽減されています。この特例をなくす案です。



【政治】
70歳以上の医療費負担増 厚労省案、上限額段階的に
Tweet
2016年12月1日 朝刊
 厚生労働省は三十日に開かれた社会保障審議会の部会で、医療保険制度の見直し案を示した。医療費の自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」については、二〇一八年八月までに七十歳以上の負担上限額を段階的に引き上げる。七十五歳以上対象の後期高齢者医療制度でも、低所得者などの保険料軽減の特例措置を廃止する方針を示した。同省は与党と調整し年内に決める。実施が決まれば、高齢者に医療費と保険料の両面で負担増を求めることになる。 (中根政人)
 高額療養費制度では、医療費が月額百万円かかったと仮定した場合、七十歳以上で年収三百七十万円未満の人の入院時の世帯での負担上限額(月額)を、現在の四万四千円から五万八千円に引き上げる。年収三百七十万円以上の現役並み所得の人については、年収に応じて新たに三つの区分を設定。負担上限額は現在の八万七千円から最大二十五万四千円に引き上げる。
 外来受診時の負担上限額は、年収三百七十万円未満の人は現行の一万二千円から五万八千円に引き上げる。現役並み所得の人は四万四千円から最大二十五万四千円に引き上げる。
 一方、低所得で住民税が非課税の人の外来受診時の負担上限額も、現行の八千円を一万〜一万五千円に引き上げる案を盛り込んだ。
 後期高齢者医療制度では、低所得者や元会社員の扶養家族など約九百十六万人の定額部分の保険料を最大九割軽減している特例措置を廃止して、本来の軽減幅に戻す案を提示した。特例措置がなくなった場合、夫婦世帯で妻の年金収入が年八十万円以下の場合、夫の年金収入が百六十八万円以下の高齢者の医療保険料の月額は、現在の三百八十〜五百七十円から千百三十円に値上げされる。
◆75歳以上の特例廃止へ
 厚生労働省がまとめた医療保険制度の見直し案は、高齢者に厳しい負担増となる内容です。 (鈴木穣)
 Q 見直しの理由は。
 A 高齢化による医療費増で政府は費用を削減したいのです。でも、受診を控える人が出ないよう注視が必要です。
 Q たとえば、どんな制度を見直すの。
 A 医療費の負担を軽減する高額療養費制度です。月ごとに決めた自己負担額の上限を超えた費用は、医療保険から支払ってくれます。七十歳以上は入院で一万五千〜約八万円、外来で八千〜約四万四千円が自己負担の上限。治療を受けて高額な出費を強いられた時の重要な支援策になっています。
 Q どのぐらい負担を重くするの。
 A 七十歳未満に比べ、七十歳以上の自己負担は低く抑えられています。これを現役並みに引き上げる案で、収入の高い人の負担を増やします。見直し案が示された会合でも、委員から「負担能力に応じた制度に」との意見が出ました。
 Q ほかの負担増は。
 A 七十五歳になると、全員が「後期高齢者医療制度」に加入します。二〇〇八年に制度を始めた際、高齢者の負担に配慮し保険料を軽減する特例措置を導入しました。保険料は収入に比例し額が決まります。もともと軽減措置があるのですが、特例でさらに軽減されています。この特例をなくす案です。



以下は東京新聞社説より
【社説】

トランプノミクス

歴史は怖く繰り返す

Tweet

2016年12月3日

 米次期大統領トランプ氏の経済政策はかつてのレーガノミクスを想起させる。一時の繁栄と負の遺産。トランプノミクスは歴史を繰り返すのか。

 すでに米国は株価高騰と強いドルに沸き返っている。

大型減税と大規模な公共投資を柱とするトランプノミクスへの期待がにわかに高まったためだ。

その流れは日本にも波及、円安が十円も進み、一時下げた株価は急反発した。

 市場はトランプノミクスの景気浮揚効果にすぐさま飛びついた。

だが、むしろ冷静になって、三十五年前の酷似した経済政策が何を残したかを学ぶべきではないか。

レーガノミクスの影

 トランプノミクスとは何か。
まずは、レーガン政権期を上回る超大型減税である。

所得税

最高税率を39・6%から33%に下げ、

税率を現在の七段階から

12、25、33%の

わずか三段階にする。

 あらゆる所得階層が減税になると公約したが、

財務長官に指名されたムニューチン氏は

「控除を縮小するので必ずしも高所得者は減税にならない」

と述べ、不透明な部分もある。

相続税を撤廃する方針なので格差は拡大し、固定化するおそれがある。

 法人税も35%から15%に極端に引き下げる。

これは、減税で企業に投資を促し経済成長すれば税収が増えるというレーガノミクス時の「ラッファー曲線」理論を採り入れたものだ。

減税規模は十年間で六兆ドル(約六百八十四兆円)ともいわれている。

 一方、財政出動も壮大だ。インフラ投資に五年間で五千五百億ドル(約六十三兆円)を投じるとし、大統領選を争ったヒラリー・クリントン氏の主張の二倍だ。

老朽化した高速道路や橋、空港、学校などを世界最先端に刷新、数百万の雇用を生み出すと宣言した。

主に支持した白人労働者向けである。

 大風呂敷で根拠が希薄とも指摘される。

だが現在でも堅調な米国経済だ。

景気刺激策が実施されれば、成長率はここ数年の2%台前半から4%程度まで大幅に伸びるという見方がある。

四年後の大統領再選が最大目標なのだろうが「バブルが起きかねない」と警戒する声が出始めている。

◆山高ければ谷深し

 けた外れの減税と大規模な財政出動、そして「米国を再び偉大に」の合言葉は、まさに一九八一年のレーガン大統領一期目の経済政策レーガノミクスと重なる。

規制緩和や強いドルも共通する。
 新自由主義的な政策を推し進めて「米国資本主義の中興の祖」との評価もあるレーガン政権だが、その帰結はどうだったか。
 軍事費拡大に充てた積極財政と大型減税が効き、経済の規模は確かに拡大した。

株価の面でも、米国史上最大の上昇相場の起点にはなった。

だが結果的に

財政赤字貿易赤字の、いわゆる「双子の赤字」を生んだ。

 米国で日本車が破壊される光景は日米貿易摩擦の象徴として記憶に残るが、それもレーガノミクスの副産物ということだ。

ドル高政策は新興国からの資金流出を招き、メキシコなど中南米債務危機の引き金となった。

行き過ぎたドル高が是正されたのはG5(先進五カ国蔵相・中央銀行総裁会議)が緊急会合で協調行動を決めた「プラザ合意」の八五年である。


 それは日本経済凋落(ちょうらく)の始まりともいわれる。

急激な円高に見舞われた日本は、利上げの遅れから結果的にバブル経済を生んだ。

そのバブル崩壊後は、今に続く「失われた二十年」である。

レーガノミクスが世界に、そして日本経済に残した爪痕はかように大きかった。

 山高ければ谷深し−経済の格言のごとく、トランプノミクスも活況の後に谷底へ転落するのではないか。

 一年半程度は熱狂するだろうが長続きはしない。

過度の財政拡張が、反動で危機を招く図式はレーガノミクスと同じだ。

 致命傷になりそうなのは、トランプノミクスの根底に流れる保護主義や移民規制といった米国第一主義だ。

米経済を支えてきた移民労働力や安い輸入品を締め出せば自らの首を絞めることになろう。

 焦点はもう一つある。

中国リスクだ。

米国の貿易赤字は中国が五割を占めており、トランプ氏は中国を「為替操作国」と名指しで敵視する。

米中貿易摩擦の懸念や、ドル高人民元安が続けば対外債務が大きい中国は深刻な打撃を受けるおそれがある。

◆実施までにハードル


 もちろんトランプノミクスが実際に動くのかは疑問が残る。

税制の法案は日本と違い、議会に権限がある。上、下院とも共和党が多数を占めるがトランプ支持ばかりではない。共和党の主流派は財政出動の拡大にも消極的だ。

 一月に誕生する新政権のトランプノミクスという実験も、失敗に終わる可能性を否定できない。

この記事を印刷する