1トランプ 2法定利率 3大学質保証とは

1  トランプと世界

■ 政治
トランプ氏が、世界を動かす?
小宮山洋子

いよいよトランプ氏が、アメリカの次期大統領に就任する1月20日が、近くなってきました。この時期になって、オバマ大統領が、8年間いかに、言葉がもつ力を世界に知らしめた大統領だったか等の賛辞が送られ、支持率も上がって、オバマ大統領を惜しむ声が出ている、ということです。遅すぎた感は、ありますが。

トランプ氏を次期大統領に選んだ大統領選で、ロシアのプーチン大統領が、トランプ氏の勝利を狙って、クリントン氏の陣営にサイバー攻撃をしかけ、流出したメールを内部告発サイト「ウィキリークス」が暴露したことが、明らかになりました。

米情報機関を束ねる国家情報長官室が、6日、ロシアのプーチン大統領の指示があったと断定する報告書を公表しました。世界のこれからを左右する犯罪といえると思います。プーチン大統領と仲良くしたいトランプ氏は、ロシアを非難するのではなく、民主党のわきの甘さを指摘している、と報じられていますが、就任後、困難な問題を抱えることになる、とみられています。

トランプ氏のエコノミクスを「トランポノミクス」というそうで、それに期待して、株価が上がっています。1兆ドル(約100兆円)のインフラ投資、法人税を35%から15%に、経済成長率を4%に、雇用を10年間で2000万人創出などが、言われている経済政策です。

日本にとっては、匙加減でできるのか、口先だけで先細りか、を冷静にみる必要があり、期待先行はダメ、と語っている専門家もいます。ツイッターでのトランプ氏の口撃は、日本のトヨタ自動車にも向けられ、メキシコ新工場をとんでもない、としています。

トヨタは、これまでも創出してきたアメリカでの雇用には影響がない等を伝える、としていますが、株が下がったり、すでにその影響が国内でも出ています。会見をするのではなく、ツイッターで、まだ大統領ではないのに、勝手なことを表明しているやり方も、どうかと思います。

政治経験のないトランプ氏の組閣は、「大富豪、ゴールドマンサックス、将軍」という3つの特徴がある、と報じられています。独自の偏った人脈から選んだ側近などブレーンを中心に政権運営を進める、と見られていて、心配です。総資産が約6千億円もある投資家、金融大手のゴールドマンサックス出身者、将軍や軍人の重用。こうした人達が、トランプ氏を支えた、さびれた製造業の白人労働者を満足させる政策を打ち出せるとは、思えません。

やはり、冷静に見ながら必要な対応をしていくしかないのでしょうか。

これ以上、不安定な世界にはしないでほしいものです。第二次大戦後に作られた世界秩序が壊され、新しいよりよい秩序ができるわけでもない、という状態になることを懸念しています。


法定利率
以下はブロゴス記事より

「法定利率」の引き下げで得する人、損する人
PRESIDENT Online

文=ジャーナリスト 村上 敬 弁護士 長谷川裕雅=答えていただいた人 図版作成=大橋昭一
法定利率が高いとトラブルが長引く?
民法改正で、法定利率の引き下げが検討されている。法定利率とは、契約時に当事者間で金利(約定利率)を定めなかったときに適用される金利。たとえば借金返済の期限を過ぎるなど、債務不履行によって遅延損害金が発生したが約定利率を決めていなかった場合や、不法行為によって損害賠償金が発生した場合などに適用される。
民事法定利率は現状で年5%(商事法定利率は6%)。法務省民法改正案では、まず法定利率を3%に引き下げて、その後は3年ごとに、過去5年の市場金利を踏まえて1%刻みで見直すとされている。
日銀がマイナス金利を導入して、いまや市場金利は限りなくゼロに近い。法定利率とのギャップが今回の改正案の検討につながったが、法定利率が市場金利より高いのはあたりまえという声もある。長谷川裕雅弁護士は、こう解説する。
「法定利率には、債務履行を遅らせたことに対する制裁の意味合いがあります。法定利率が低ければ、遅延損害金もたいしたことはない、それならば約束を反故にしようという考えにもなりかねません」
もっとも、法定利率が高すぎると別のモラルハザードを引き起こす可能性がある。遅延損害金の支払いが遅れれば、それだけ年5%の適用期間が長くなり、金額が膨らんでいく。それゆえ債権者がわざと裁判を引き延ばしたりすることも考えられる。
「実際、消費者金融への過払い金請求では、あえて和解に応じず訴訟に持ち込んだケースもありました。和解せずに裁判になれば請求が退けられるリスクもありますが、過払い金請求や未払い残業代請求のような“勝ち筋”の事案では、債権が消滅する時効ぎりぎりのタイミングで提訴したほうが、債権者は得をすることになります」
法定利率は、低すぎても高すぎてもダメなのだ。
将来は自動車保険の保険料が引き上げに
法定利率の改正は、交通事故にもかかわってくる。

損害賠償額の考え方(事故で5年後の年収500万円を失った場合)
交通事故の損害賠償額は、被害者の逸失利益(事故がなければ得ていたはずの収入)をもとに算定される。もっとも、被害者が仮に定年まで働いたときの逸失利益が5000万円だったとして、それがそのまま賠償額になるわけではない。


いま5000万円が手に入ると、資産運用して定年時に6000万円になっているかもしれないからだ。この利息相当額を「中間利息」といい、逸失利益から差し引いたうえで損害賠償額が決まる。
「法定利率は中間利息の計算に使われています。法定利率が高いほど利息が大きくなり、いま受け取れる損害賠償額は小さくなります。改正案のように法定利率が引き下げられれば、逆に損害賠償額が膨らみます」
一方で、保険会社の負担が増えるので、自動車保険料は引き上げられることが予想される。ドライバーには痛し痒しといったところだ。

3 大学質保証とは

■ ライフ
顧客なき国立大学の質保証
田中弥生

1. 評価から質保証へ  最近、大学の「質保証」という言葉が頻繁に用いられるようになっている。さらに、「内部質保証」という言葉も登場し、大学業界、特に国立大学界隈ではある種の流行語のようになっている。

 そもそも大学の「質保証」とは何か。ごく単純化して言えば、大学評価に代わる言葉として用いられている感がある。そして、「内部質保証」は大学による自己評価、「質保証」は評価機関による第三者評価(あるいは評価全般)をさしている。

 しかし、その具体をみると大学評価と大学の質保証との間の相違もみえてくる。まず、その対象だ。大学評価の場合には、研究と教育の双方をさしているが、質保証の議論の実際は主に大学教育に焦点が当てられている。また、大学評価の場合には、ある時点での合規性やパフォーマンスに着目する。だが、質保証の場合、入学から卒業までの教育サービスの提供とそれを可能にしうる体制や運営などトータルに、パフォーマンスのみならずそのプロセスも着目している。
2. なぜ「質保証」なのか そもそも、日本で「質保証」を取り上げられるようになったのは、海外の高等教育界の影響が大きい。英国や欧州諸国で用いられた quality assuranceという言葉が直訳され、日本の高等教育政策や教育学の世界で用いられるようになった。

 では、欧州はなぜこの言葉を用いるようになったのか。歴史的検証を行う必要があるが、筆者は次のように考える。第一に、1994年のWTOの「世界貿易機関を設立するマラケッシュ協定」の影響である。この協定の附属書として「サービスの貿易に関する一般協定」が作成されたたが、これにより、教育サービスを含むサービス分野がWTOにおける貿易交渉の対象として取り扱われることとなった。つまり、大学教育を、”サービス”として捉えることが国際的に公認されたのである。しかし、多くの大学関係者にとってこの言葉はショックだったに違いない。大学教育にビジネス用語が用いられ、さらには自らが顧客に奉仕することを連想させるような言葉だったからだ。

 第二に、学生からのプレッシャーが挙げられる。英国では2012年に授業料が大幅に引き上げられた。学生たちはデモを繰り返し不満の声を露にした。そうなると、大学側は高い授業料の代わりに、何を提供できるのかをより明確に学生に説明し、証明することが求められることになる。

 また、若者の慢性的な失業問題は欧州諸国に共通する社会問題となっている。


例えば、フランスの修士号取得後18カ月以内の就職率は6割にとどまっている。高等教育を受けたものの職を得られない若者の数は増加傾向をみせている。
 こうしたプレッシャーを受け、フランスでは大きな試行がおこなわれようとしている。専門職養成(グラン・ゼコール)のみならず、一般学士課程(大学)においても、そこで学んだ者が身に着けるものを具体的に明記することが、大学に義務付けられたのである。明記の内容は、専門分野の能力、言語能力、ジェネリックスキル(汎用的なスキルで思考力やコミュニケーション力など)、そして、職業準備能力だ。職業準備能力では、どのような業務をできるようになるのか、そこで使える技術・能力、そしてどのような職種への就職が可能になるかを記すことが求められる。

 こうなると、学生を主軸に捉え、求められる知識、技術、能力を定義し、それに見合う教育サービスの提供が可能になるように、カリキュラム、教員、運営を見直すことが大学に求められることになる。さらに、学生の要望に応えられなければ、改善を余儀なくされるわけで、恒常的に見直しが求められることになる。
 このようにみると欧州の大学の「質保証」の構図は明快だ。大学教育をサービスとして捉えた時、その先にある顧客としての学生の存在がより鮮明になり、彼らへの要望に大学が応える術として、「質保証」というコンセプトが登場してきたのである。
3. 顧客なき日本の大学「質保証」  日本の高等教育政策に「質保証」という言葉が登場したのはいつなのだろうか。

 中曽根政権、橋本政権、小泉政権の内閣関連文書(経済財政諮問会議、規制改革会議、行政改革会議など)と府省文書(中教審、大学審議会などの答申)をデータ化し分析を行ってみた。

 すると、この言葉が登場したのは小泉内閣からであることがわかった。先の3政権はニュー・パブリック・マネジメントの考え方の下、大規模な行政改革を行っているが、特に、小泉政権は「官から民」「聖域なき構造改革」を掲げ、国立大学もその対象となり国立大学法人化が施行された。こうした中で、海外で議論されていた「質保証」という言葉が登場するのも頷ける。

 しかし、「質保証」の関連用語を抽出してみたところ、「大学生」という言葉が検出されなかったのである。26件の言葉が検出されたが、多く検出されたのは「大学」「評価」「国際化」「自律的」、次いで「大学教育」であった。

 一体、誰に向けた「質保証」なのだろうか。
4. 私立MBA関係者が突いた「内部質保証」の矛盾  ある私立大学のMBA関係者に「内部質保証」について尋ねたことがある。すると「何を言っているのかわからない」という答えが戻ってきた。高額な授業料を求めるMBAにとって、学生の批判は、大学の収入や経営にすぐさま跳ね返ってくる。したがって、常に、学生の学習成果や反応、そして国際的な潮流に鑑みて、カリキュラム、教材、教員構成を見直さざるをえないというのである。したがって、わざわざ「内部」という言葉を加える意味がわからないというのだ。ちなみに、このMBAコースは海外の認証評価機関の評価を受けているが、あくまでも国際舞台に出るためのパスポートと位置付けている。
5. 国立大学の質保証が機能するための条件  2016年3月、文科省は、内部質保証の確立を重視した評価への転換を掲げた。その背景には、いわゆる”評価疲れ”や評価の形骸化があり、大学の自主的な取り組みをより重視すべきであるという意見がある。しかし、果たしてうまく機能するのであろうか。