極東の極右ブラック政権と類似しているトランプ政権

■ メディア
「私の父親は村長よ」事件

 以前、李剛事件について記事にしたことがありますが(教師が生徒に謝罪(湖南省))、また同じような事件が発生しました。ただ、それがなんとも呆れるしかない事件だったのでそれはそれで興味をそそられるものがあったので、これについて少し(参照サイト 『中国新聞網』「女子宝・・内吸毒被抓后称“我・是村・”(・)」)。

 最初に李剛事件の概要を簡単に記載しておくと、ある男が昨年10月河北大学内で、飲酒運手をして2人の女子大生をはね、1人を死亡させ、1人に重傷を負わせたものの、逮捕された時、全く反省の色を見せないばかりか、その際に「俺の親父は李剛(保定市北市区公安分局の副局長)だ」と叫んだという事件です。

 つまり俺は警察高官の息子だから何故逮捕できるのだとわめいたわけで、あまりにもひどいということで、当時ネットでかなり話題になりました。

 今回の事件は浙江省麗水市で発生したもので、BMWが斜めに走ったと思ったら急に道中で停まるというおかしい動きをしていたので、警察がどうしたのかと近寄ったところ、運転していた女性の様子が明らかにおかしいとなって逮捕されたというものです。

 記事によると運転していたのは、25歳の女性で、意識がはっきりしないうえに、口の周りには白い粉がついていたということですから、あまりにもわかりやすすぎです。何でもムシャクシャしていたので、薬物を摂取してドライブでもと思い、車を運転していたら、急に中毒症状をおこしておかしくなってしまったそうです。

 逮捕されるとき、「自分の父親はどこどこの村長」だと言うとともに、「不行、不行」(だめー、だめー)とだけ答えていたと報道されています。

中国の行政単位は日本ほどわかりやすくなく、「市」といっても、省と同じレベルの直轄市もあれば、省の下の通常の市もあれば、更にその下の県と同じレベルの市もあるという様に結構複雑です。

 日本の場合は都道府県と市町村という様に2段階ですが、中国の場合は、省級、地(区)級、県級、郷級の4段階から成り立っています。

イメージとして思ってもらえれば良いのが、○○省の下の○○市、その下の○○県、その下の○○郷(鎮)というところでしょうか。

 さて村ですが、郷の下の組織になります。そのため日本の感じで言えば町内会の会長とでもいったところでしょうか。だた、やはり権限はもっていますので、現在のというより戦前のと思ってもらえればかなり近いかもしれません。

 ネットでもいろいろ話題となっているようですが、これはどちらかというとたかだか村長にしか過ぎない者の娘が自分の父親の権力を誇っていることが馬鹿にされたという感じが強いように思います。

端から見るとバカバカしい話ですが、本人は大まじめかもしれません。

 というのは、本当に大きな権限を持っている者は何も小さいことを気をしなくてもよくなるかもしれませんが、小さい権力しか持っていないものはその自分の小さい権限を握って絶対放さないということがよくあります。

つまり端から見ればたかだか村長ですが本人達にとっては、それが自分たちのアイデンティティの重要な部分となっているのかもしれません(このギャップがまた嘲笑を誘うわけですが)。

 それに25歳の娘がBMWに乗れることも注目を集めたのかもしれません。中国でもドイツ車は高級車の代名詞で、ベンツやBMWはやはり憧れのまとです。

絵に描いたようなドラ娘が馬鹿をして親の権力を笠に着た事件といいたいが、その権力が大した権力でない、いろいろな面で笑わせてくれる事件です。

 しかし、こうした大した権力でなくともそれを握っている者の機嫌を損ねると、手続をとってもらえないかもしれないといのが中国で、実にやっかいなところです。



■ 政治
園田政務官のパフォーマンスについての海外報道

 少し前に、内閣府園田康博政務官が福島第1原子力発電所から出た低濃度汚染水の浄化水を飲むということが話題になりましたが、この事件が海外でも報道されており、いろいろ興味深かったので、これについて少し。

1 園田政務官と浄化水

 最初にこの背景などについて言及しておきます。そもそもの発端は東電が10月7日から福島第1原子力発電所の5号機と6号機に溜まった水を浄化して、原発敷地内の山林などで散水を始めたことです。これに対し放射性物資を拡散するのではないかという批判が起こりました。

 実際10月10日の東電の記者会見では飲んでも大丈夫かという質問が、あるフリージャーナリストからなされました。ところが、東電側は飲料水ではない(殺菌などがされていない)として、飲むことを拒みました。

 これを聞いたフリージャーナリストの寺澤有氏が、同じ様な質問を13日の政府と東電の合同会見でしたところ、質問された園田政務官が最終的に浄化水を飲むことを約束し、飲んだというのが事件のあらましです。

2 『新華網』の報道

 さてこの事件が『新華網』でもイギリス紙Guardianが11月1日に配信した記事の翻訳記事として報道されておりました(「日官・喝核・站・理水・・者所迫 喝水・手・抖」(日本の官僚が原子力発電所の処理された水を記者から圧力を受け飲む時、手が震えていた))。

 この記事の標題を見てもわかるとおり、飲んだは飲んだが手が震えていたことに重点を置いた記事となっております。ちなみに関係する部分を訳すと、以下のとおりです。

(園田政務官が処理水を飲んだことについて)

マスコミでは、こうしたショーをするのは如何なものかといった意見もあり、議論百出の状態であった。

なおかつ園田康博の行為は記者の圧力になってなされてもので、当時彼の手は絶えず震えていたからだ。

 水の中の放射性物質は既に取り除かれているとはいっても、園田康博の唇が処理水の入ったコップに触れたとき、彼が緊張しているのは明らかであった。

 園田康博が水でコップを一杯にする時、彼の両手はずっと震えていた。その後彼は2口で水を飲み干し、コップを掲げたままテレビカメラの前に短く留まり、自分は無事だということを証明した。

 この記事は短いもので、園田政務官が手を震わせながら水を飲んだことと、「飲んだからといって、絶対安全という証明にはならないことは知っているが、現在これが大衆に対し証明する最もよい方法と思ったから飲んだ」という彼の発言と、今年4月にも枝野官房長官いわき市のいちごを食べたこと等を紹介して終わっています。

 そのためここでは、園田政務官の手が震えていた原因などについては直接言及しておりません。しかし、読んだ人がどのような印象をうけるかというと、言わずもがなで、あまり良くない印象を受けることは間違いありません。

3 Guardianの報道

  さて中国の翻訳記事ですが、私のブログを定期的に読んでいただいている方には既におなじみのことかと思いますが、結構いい加減です。そのため元記事を確認しないと本当に騙されます。というわけで、元記事ですが、”Japanese MP drinks Fukushima water under pressure from journalists”(日本の議員が記者の圧力を受けてフクシマの水を飲む)です。

 さてこの記事ですが、先に訳した政務官の唇がコップに触れていたとき、明らかに緊張していた云々の部分はだいたいそのとおりの訳ですが、あれほど『新華網』で強調されていた岡田政務官の手が震えていたという部分の記述は以下のとおりです。   Sonoda's hands shook as he half-filled the glass from a plastic bottle, before polishing off the water in two swift gulps. He briefly held the glass up to the cameras, as if to prove that no sleight of hand had been involved. 私の下手くそな訳だとおそらく以下のようになるかと思います。  水を2口でがぶ飲みする前に、プラスチックボトルからコップに水を半分注いだ時、園田の手は揺れた(震えた)。彼はカメラの前にコップを短時間掲げたが、それは手に手品のたねがないことを証明しているようだった。4 中国の翻訳の問題点
 問題になるのは、「Sonoda's hands shook」のところで、文型は極めて単純な主語と動詞だけの文です。shookはshakeの過去形で、この動詞は自動詞と他動詞がありますが、後ろに目的語がないので、自動詞で、「揺れる、震える」の意味になります。

 中国語の原文は「当?田康博接・盛・水的杯子・,他的双手一直在抖。」で先に訳したとおり、「岡田康博が水でコップを一杯にする時、彼の両手はずっと震えていた。」です。先に見たとおり、「揺れた」「震えた」どちらの訳も可能かと思いますが、「ずっと(一直)震えていた」は如何なものかと思います。

 それに後ろの「手品のたね」云々の部分があるのとないのとでは、全く受ける印象が異なってきますが『新華網』では訳されておりません。何にしろこのGuardianの記事はさほど岡田政務官に批判的ではありません。

 例えば「問題の水は既に放射性物質が取り除かれており、彼はマゾヒスト的行為をしたわけではない」という記述もあれば、記事の一番最後では、BSE危機の時に英国の牛肉の安全性を証明するために娘にハンバーガーを食べさせた保守党議員John Gummerを引き合いにだし、彼のようなことはしなかったとしております。

 当然こういうところは中国語には訳されていないわけで、例によって例の如く、かなり意図的に中国語に翻訳されて報道されていることがわかります。最後にあまり大したことではありませんが、Guardianの記事では、「Yu Terasawa, a well-known freelance journalist」(有名なフリージャーナリスト寺澤有)となっておりました。

■ メディア
「私の父親は村長よ」事件

 以前、李剛事件について記事にしたことがありますが(教師が生徒に謝罪(湖南省))、また同じような事件が発生しました。ただ、それがなんとも呆れるしかない事件だったのでそれはそれで興味をそそられるものがあったので、これについて少し(参照サイト 『中国新聞網』「女子宝・・内吸毒被抓后称“我・是村・”(・)」)。

 最初に李剛事件の概要を簡単に記載しておくと、ある男が昨年10月河北大学内で、飲酒運手をして2人の女子大生をはね、1人を死亡させ、1人に重傷を負わせたものの、逮捕された時、全く反省の色を見せないばかりか、その際に「俺の親父は李剛(保定市北市区公安分局の副局長)だ」と叫んだという事件です。

 つまり俺は警察高官の息子だから何故逮捕できるのだとわめいたわけで、あまりにもひどいということで、当時ネットでかなり話題になりました。

 今回の事件は浙江省麗水市で発生したもので、BMWが斜めに走ったと思ったら急に道中で停まるというおかしい動きをしていたので、警察がどうしたのかと近寄ったところ、運転していた女性の様子が明らかにおかしいとなって逮捕されたというものです。

 記事によると運転していたのは、25歳の女性で、意識がはっきりしないうえに、口の周りには白い粉がついていたということですから、あまりにもわかりやすすぎです。何でもムシャクシャしていたので、薬物を摂取してドライブでもと思い、車を運転していたら、急に中毒症状をおこしておかしくなってしまったそうです。

 逮捕されるとき、「自分の父親はどこどこの村長」だと言うとともに、「不行、不行」(だめー、だめー)とだけ答えていたと報道されています。

中国の行政単位は日本ほどわかりやすくなく、「市」といっても、省と同じレベルの直轄市もあれば、省の下の通常の市もあれば、更にその下の県と同じレベルの市もあるという様に結構複雑です。

 日本の場合は都道府県と市町村という様に2段階ですが、中国の場合は、省級、地(区)級、県級、郷級の4段階から成り立っています。

イメージとして思ってもらえれば良いのが、○○省の下の○○市、その下の○○県、その下の○○郷(鎮)というところでしょうか。

 さて村ですが、郷の下の組織になります。そのため日本の感じで言えば町内会の会長とでもいったところでしょうか。だた、やはり権限はもっていますので、現在のというより戦前のと思ってもらえればかなり近いかもしれません。

 ネットでもいろいろ話題となっているようですが、これはどちらかというとたかだか村長にしか過ぎない者の娘が自分の父親の権力を誇っていることが馬鹿にされたという感じが強いように思います。

端から見るとバカバカしい話ですが、本人は大まじめかもしれません。

 というのは、本当に大きな権限を持っている者は何も小さいことを気をしなくてもよくなるかもしれませんが、小さい権力しか持っていないものはその自分の小さい権限を握って絶対放さないということがよくあります。

つまり端から見ればたかだか村長ですが本人達にとっては、それが自分たちのアイデンティティの重要な部分となっているのかもしれません(このギャップがまた嘲笑を誘うわけですが)。

 それに25歳の娘がBMWに乗れることも注目を集めたのかもしれません。中国でもドイツ車は高級車の代名詞で、ベンツやBMWはやはり憧れのまとです。

絵に描いたようなドラ娘が馬鹿をして親の権力を笠に着た事件といいたいが、その権力が大した権力でない、いろいろな面で笑わせてくれる事件です。

 しかし、こうした大した権力でなくともそれを握っている者の機嫌を損ねると、手続をとってもらえないかもしれないといのが中国で、実にやっかいなところです。



■ 政治
園田政務官のパフォーマンスについての海外報道

 少し前に、内閣府園田康博政務官が福島第1原子力発電所から出た低濃度汚染水の浄化水を飲むということが話題になりましたが、この事件が海外でも報道されており、いろいろ興味深かったので、これについて少し。

1 園田政務官と浄化水

 最初にこの背景などについて言及しておきます。そもそもの発端は東電が10月7日から福島第1原子力発電所の5号機と6号機に溜まった水を浄化して、原発敷地内の山林などで散水を始めたことです。これに対し放射性物資を拡散するのではないかという批判が起こりました。

 実際10月10日の東電の記者会見では飲んでも大丈夫かという質問が、あるフリージャーナリストからなされました。ところが、東電側は飲料水ではない(殺菌などがされていない)として、飲むことを拒みました。

 これを聞いたフリージャーナリストの寺澤有氏が、同じ様な質問を13日の政府と東電の合同会見でしたところ、質問された園田政務官が最終的に浄化水を飲むことを約束し、飲んだというのが事件のあらましです。

2 『新華網』の報道

 さてこの事件が『新華網』でもイギリス紙Guardianが11月1日に配信した記事の翻訳記事として報道されておりました(「日官・喝核・站・理水・・者所迫 喝水・手・抖」(日本の官僚が原子力発電所の処理された水を記者から圧力を受け飲む時、手が震えていた))。

 この記事の標題を見てもわかるとおり、飲んだは飲んだが手が震えていたことに重点を置いた記事となっております。ちなみに関係する部分を訳すと、以下のとおりです。

(園田政務官が処理水を飲んだことについて)

マスコミでは、こうしたショーをするのは如何なものかといった意見もあり、議論百出の状態であった。

なおかつ園田康博の行為は記者の圧力になってなされてもので、当時彼の手は絶えず震えていたからだ。

 水の中の放射性物質は既に取り除かれているとはいっても、園田康博の唇が処理水の入ったコップに触れたとき、彼が緊張しているのは明らかであった。

 園田康博が水でコップを一杯にする時、彼の両手はずっと震えていた。その後彼は2口で水を飲み干し、コップを掲げたままテレビカメラの前に短く留まり、自分は無事だということを証明した。

 この記事は短いもので、園田政務官が手を震わせながら水を飲んだことと、「飲んだからといって、絶対安全という証明にはならないことは知っているが、現在これが大衆に対し証明する最もよい方法と思ったから飲んだ」という彼の発言と、今年4月にも枝野官房長官いわき市のいちごを食べたこと等を紹介して終わっています。

 そのためここでは、園田政務官の手が震えていた原因などについては直接言及しておりません。しかし、読んだ人がどのような印象をうけるかというと、言わずもがなで、あまり良くない印象を受けることは間違いありません。

3 Guardianの報道

  さて中国の翻訳記事ですが、私のブログを定期的に読んでいただいている方には既におなじみのことかと思いますが、結構いい加減です。そのため元記事を確認しないと本当に騙されます。というわけで、元記事ですが、”Japanese MP drinks Fukushima water under pressure from journalists”(日本の議員が記者の圧力を受けてフクシマの水を飲む)です。

 さてこの記事ですが、先に訳した政務官の唇がコップに触れていたとき、明らかに緊張していた云々の部分はだいたいそのとおりの訳ですが、あれほど『新華網』で強調されていた岡田政務官の手が震えていたという部分の記述は以下のとおりです。   Sonoda's hands shook as he half-filled the glass from a plastic bottle, before polishing off the water in two swift gulps. He briefly held the glass up to the cameras, as if to prove that no sleight of hand had been involved. 私の下手くそな訳だとおそらく以下のようになるかと思います。  水を2口でがぶ飲みする前に、プラスチックボトルからコップに水を半分注いだ時、園田の手は揺れた(震えた)。彼はカメラの前にコップを短時間掲げたが、それは手に手品のたねがないことを証明しているようだった。4 中国の翻訳の問題点
 問題になるのは、「Sonoda's hands shook」のところで、文型は極めて単純な主語と動詞だけの文です。shookはshakeの過去形で、この動詞は自動詞と他動詞がありますが、後ろに目的語がないので、自動詞で、「揺れる、震える」の意味になります。

 中国語の原文は「当?田康博接・盛・水的杯子・,他的双手一直在抖。」で先に訳したとおり、「岡田康博が水でコップを一杯にする時、彼の両手はずっと震えていた。」です。先に見たとおり、「揺れた」「震えた」どちらの訳も可能かと思いますが、「ずっと(一直)震えていた」は如何なものかと思います。

 それに後ろの「手品のたね」云々の部分があるのとないのとでは、全く受ける印象が異なってきますが『新華網』では訳されておりません。何にしろこのGuardianの記事はさほど岡田政務官に批判的ではありません。

 例えば「問題の水は既に放射性物質が取り除かれており、彼はマゾヒスト的行為をしたわけではない」という記述もあれば、記事の一番最後では、BSE危機の時に英国の牛肉の安全性を証明するために娘にハンバーガーを食べさせた保守党議員John Gummerを引き合いにだし、彼のようなことはしなかったとしております。

 当然こういうところは中国語には訳されていないわけで、例によって例の如く、かなり意図的に中国語に翻訳されて報道されていることがわかります。最後にあまり大したことではありませんが、Guardianの記事では、「Yu Terasawa, a well-known freelance journalist」(有名なフリージャーナリスト寺澤有)となっておりました。

東京新聞記事より


【社説】
政治と世論を考える<4>

 トランプ氏の情報空間
Tweet

2017年8月24日

 「やつらを見ろ」

 トランプ氏が記者席を指さした。

すると会場を埋めた支持者がトランプ氏と声を合わせて

「やつらは最も不正直な人間だ」

とブーイングを浴びせた。


 昨年の米大統領選。トランプ氏の選挙集会ではメディアたたきが繰り返され、就任後の今もメディア敵視は続いている。


 メディアも黙ってはいない。ウォーターゲート事件の報道でピュリツァー賞に輝いた元ワシントン・ポスト紙記者のバーンスタイン氏は

「これほど悪質な大統領は見たことがない」

と批判し、メディアがトランプ氏に立ち向かうよう訴えた。


 ニューヨーク・タイムズ紙がアカデミー賞授賞式の中継で流したCMは、

「真実がこれまで以上に重要になっている」

との文言で結ばれた。

メディアは事実を武器に政権と対峙(たいじ)しようとしている。

 ところが、ある世論調査によると、メディアにはフェイク(偽)ニュースが多いと65%の人が信じ、うち共和党支持者では八割に達する。

メディア不信は深い。

 トランプ氏も「既成メディアはフェイクだらけだ」と毒づくが、自分の方こそ根拠のない発言を乱発し、取り巻きも同調する。大統領就任式の観客数をめぐる騒動がいい例だ。

 オバマ氏が就任した八年前の時の写真と比べて明らかに少ないのに、当時の大統領報道官は「過去最多だ」と自賛した。

これをメディアが疑問視すると、大統領顧問は「オルタナティブ・ファクト(もう一つの事実)だ」と真顔で強弁した。

 トランプ氏がツイッターを重宝するのは、既成のメディアを介さず支持者に直接、メッセージを伝えることができるからだ。支持者を扇動する強力な武器になる。だから、いくら批判を受けてもツイッターをやめようとはしない。

 ネット空間では自分の嗜好(しこう)や立場に合った情報だけを選択できる。

メディアがトランプ氏の虚偽をいくら指摘しても、こうした別の情報空間にいるトランプ支持者は聞く耳を持たない。支持層がなかなか崩れないのは、これが大きな理由だ。

 だが、自分の気に入らない情報は排除し、好みに合うものだけを受け入れれば、客観性を失い、偏見を自ら助長させる危険を伴う。


 正しい情報や事実に基づかない政治がまともであるはずがない。この歪(ゆが)みは危険である。