冤罪 滋賀県 被害者は西山美香さん

軽度知的障害と発達障害のある被害者 西山美香さん。

看護助手の彼女を利用して滋賀県警察のA刑事は、当時の湖東記念病院勤務の看護師全員が知らない、消音ボタンを押すとアラームが一分間消える消音機能(しかし、最初のピッという音くらいは鳴る)を利用してチューブを外し患者を窒息死させたと調書を偽造し、殺人罪で送検し、結果、懲役12年の実刑に貶めたのです。

真犯人は、さぞかし喜んでいたことでしょう。

詳しい記事は中日新聞7月16日朝刊4面記事にあります。

言論・解説
<ニュースを問う> 西山美香受刑者の手紙2(2)計画殺人 
2017/7/16 朝刊

 人工呼吸器を付けた患者を、アラーム音を鳴らさずにチューブを外し、窒息死させる−。そんな手口があるとは、恐らく医師や看護師でもすぐには思い付かないだろう。なのに、捜査当局は、資格もない雑務が中心の二十三歳看護助手が、自供なくしてわかり得なかった「完全犯罪」を単独でやってのけた、と主張し、裁判所も追認した。
 西山美香受刑者(37)=滋賀県彦根市出身、殺人罪で懲役十二年、来月二十五日に刑期満了、再審請求中=に軽度知的障害と発達障害があることを誰も知らなかった当時でさえ、弁護側は誘導で言わされた作り話と反論した。ましてや、彼女の障害が判明した今、緻密で冷静さが要求される「完全犯罪」を自作自演した、と主張され、信じろと言われても、無理な話というものだ。
◆1人だけ機能知る?
 冒頭の手口のヒントがある。消音ボタンを押すとアラームが「一分間やむ」機能を利用するのだ。病院内で「一分間」を知る看護師はいなかった。だが、彼女が心を寄せたA刑事作成の供述調書によると、看護助手の彼女だけが、知っていたことになっている。
 手口の答えはこうだ。呼吸器の管を外した後、音が鳴る前に素早く消音ボタンを押し、再び鳴りだす一分が経過する前にまたボタンを押す。それを西山受刑者は二回繰り返し、再び管を元通りにはめたことになっている。
 だが、この機能を警察が把握していなかった逮捕直後、彼女の供述は「衝動的な犯行」になっていた。
 【逮捕2日目】「以前から、今回のような事故を起こそうと思っていたわけではなく/夜勤で一緒だった(看護師の)Sさんが勤務時間中も寝ているように思えたので/人工呼吸器の蛇腹(管)を外せば/アラームが鳴ればSさんも起きて飛んでくると思ったのです」(供述調書)
 衝動的に管を外せば「ピーッ」という高音のアラームが鳴る。だが、聞いた人はいない。一年にわたって「鳴ったはず」で進めた強引な捜査は、ここで方針を大転換し、供述も急転していった。
 【同5日目】「本当はアラームなんて鳴っていません。Sさんや他の患者さんに気付かれないように、消音ボタンを押し続けていた」(同)
 同じ日、警察は人工呼吸器の実況見分で、消音ボタンの機能を正確に把握。だが、機器の特性を利用した複雑な手順の手口を「衝動的な犯行」とするのはあまりにも不自然だった。供述は次第に「計画的な犯行」へとかじを切り始め、その上で「一分間」が盛り込まれていった。
 【同6日目】「病院に対する不満から、かねてTさん(死亡した患者)の人工呼吸器のチューブを外して事故に見せかけて殺そうと思っていた/チューブを引っ張り上げて外し、消音ボタンを押し続けてTさんが死亡するのを待った」「消音ボタンを一回押せば、一分間アラームが消え、そのたびに消音ボタンを押した」(同)
◆衝撃的“告白”加わる
 「計画性」を決定づける衝撃的な“告白”が供述に加わった。
 【同9日目】「(犯行の二日前に)患者のXのベッド柵を外して事故に見せかけて(殺そう)としたが、考え直して止(や)め、(犯行の前日に)患者のYを殺そうと考えて首に手を掛けたが、思い止(とど)まり」(自供書)
 【同10日目】「Zさんの時も掛(かけ)布団で口をおさえつけたら、せきこまれたので/だめだと思い/もうするならTさんしかいないと」(同)
 この段階で、彼女は四人の殺害を企てたことになる。しかし、A刑事に誘導されたとみられる作り話だからか、殺人未遂が立件されることはなかった。供述までの経緯を、彼女は両親宛ての手紙にこう書いた。
 「何回も(A刑事に)前の日にTさんを殺ろ(原文のまま)すまでに何かあるのではと聞かれて/初めは何もありませんと言っていたけど、しつこく聞いてきて/Aさんのこと信用してたから(気に入られるような)嘘(うそ)をついて『前の日に殺ろそう』と思ったと言ってしまいました」
 実は、アラームの消音機能を悪用した手口でも完全に音を消すことは不可能だった。「最初のピッという音くらいは鳴る」と呼吸器に詳しい同じ病院の技師が証言したからだ。「ピッ」も最終的には、供述に付け加えられた。
 【同15日目】「アラームが『ピッ』と鳴ったので左手で消音ボタンを押し…」
 矛盾をなくして、完全犯罪はこうして成立した。警察が当初にもくろんだ架空の業務上過失致死事件に比べれば、緻密なストーリーという見方もできるだろう。だが、その主役に障害のある彼女を据えたのは、稚拙なミスキャストというほかない。

 (大津支局・井本拓志)


真犯人はどうでもよく、ライン仕事としてネジを締めるのと同様に、有罪判決とれるだけの調書を完成させれば、一丁あがり。真実なんかどうでもいいんだ。楽しく晩酌ができるように被疑者に書かせりゃいいんだワイ。真犯人などドーデモよいんだよ。その日々の繰り返しがあって刑事警察官は勤まるんだ。悪魔でよいんだ。というのが、刑事警察の基本となっているのでしょう。