カジノボケの極右晋三・橋本さん


相次ぐアトランティックシティのカジノホテル破綻

貧困率は約30%と州平均の3倍
カジノは街を再生しなかった
ニュージャージー州のアトランティックシティはラスベガスに次いでアメリカ第2位のカジノの街です。1978年にカジノをつくって、それ以来カジノで成功した街ということで日本のカジノ推進派がこぞって取り上げます。カジノのお金で大成功じゃないかと言うわけですね。 しかしこのアトランティックシティは、今はほとんど崩壊状態になっています。今年1月にアトランティッククラブというカジノホテルが閉鎖しました。6月にレベルという最新のカジノホテルが経営破綻して8月に閉鎖しました。それからショーボートというところも8月に閉鎖して、トランププラザも9月16日に閉鎖。トランププラザを経営していたトランプエンターテイメントが、経営破綻をついこの間申請しました。そこが保有しているトランプタージマハルというカジノホテルもあるのですが11月に閉鎖するだろうと言われています。 そうすると、カジノで成功したと言われているアトランティックシティに12もあったカジノホテルが、たった1年で5つ破綻してなくなるという事態になっているのです。なかでもレベルは2年前に新規オープンしたばかりの期待の大型IRカジノだったのに閉鎖に追い込まれています。 さらに人口4万人足らずのアトランティックシティには年間3,000万人を超える観光客が訪れましたが、アトランティックシティは貧しいままです。世帯平均所得は州平均の4割で貧困率は約30%と州平均の3倍です。カジノは街を再生しなかったのです。
カジノ合法化がもたらしたもの
こうしたアトランティックシティにおけるカジノの衰退は、アメリカにおける各州でのカジノ合法化の影響によるものです。ニューヨーク州が2004年、ペンシルバニア州が2007年、メリーランド州が2010年にカジノを合法化して、それぞれカジノをつくり、とりわけペンシルバニア州がアトランティックシティに近い州都フィラデルフィアにカジノをつくったのです。 この影響を大きく受けたわけですが、ニュージャージー州はそういう動きに対して無為無策だったわけではありません。 ニューヨーク州メリーランド州のカジノはスロットだけで、ペンシルバニア州のカジノは「IR」ではなかったので、ニュージャージー州は「IR」に切り替えることで生き残ろうとしました。その生き残り策の切り札としてレベルという最新のホテルを24億ドルかけてさらに2億ドルほどの税金をつぎ込んで2012年春にオープンさせたのです。 これがたった2年で経営破綻。他のホテルはどうなっているかネットで調べたら、どれもこれも立派な「IR」です。11月に潰れるといわれているトランプタージマハルなんて、大きなアリーナが3つぐらいあって、さらに展示施設もいくつもある。ようするにアトランティックシティは周辺の普通のカジノに対抗して「IR」で生き残ろうとしたけれど破綻してしまったということです。維持費がかかる「IR」は、お客さんが減ってしまうと大きな赤字を生みだし破綻するのも早いのです。
固定経費や維持費が重荷に
たとえば、ボルガタというカジノホテルがアトランティックシティにあるのですが、ここは収益の4分の1を先ほど紹介した優待サービスの「コンプ」に使っています。 トロピカーナというところは、なんとか収益を増やしていますが赤字です。結局、「IR」というのは、いろいろ揃えて優待サービスでお客さんを引っ張ろうとするので、固定経費や維持費がかかる。だから、「IR」はいつもたくさんお客さんが来ないと成り立たないし、お客さんが減るとすぐに赤字に直結するような仕組みになっているのです。 その結果、アトランティックシティは「IR」で周辺のカジノに対抗しようとしたけれども上手くいかなかったというわけです。
あらゆる階層を食い物にして成立する日本のカジノ
同じように、安倍政権が推進しようとしている「IR」型の日本のカジノも、とにかくたくさんお客さんが来なければ成り立ちません。カジノ推進派は、「日本にカジノができると400億ドル(4兆円)のマーケットができる」などと言っています。 これはアメリカのカジノでお客さんの平均負け額が年間約4万円なのですが、それで計算して1億人が日本のカジノに足を運んで、1年間に1人平均4万円負けてくれなければ4兆円のマーケットは成り立たないものです。 当然、それで利益を上げようとすれば、ものすごい大量宣伝になるでしょう。とにかくあらゆる階層に大宣伝して、お年寄りもターゲットにする。「コンプ」で大サービスしてどんどんカジノの食い物にしていくことになるでしょう。 ヨーロッパのカジノというのは、いわゆる会員制が基本です。それも公営が多くて、いわば営利優先にはならない形で運営されています。ところが、安倍政権が狙っている「IR」型のカジノというのは、営利優先で、情け容赦なく日本人の懐を食い物にしていくようなものになるのです。 【鳥畑与一静岡大学教授談】


さらにそれを発展させたのがシンガポール型です。アメリカの「IR」はいわゆる展示施設が必ずしも付いているわけではありませんが、シンガポールの場合は、たとえばカジノを運営しているゲンティン・シンガポールがリゾート・ワールド・セントーサにテーマパークを併設したり、マリーナ・ベイ・サンズの場合は巨大な展示施設でMICE機能をものすごく強化しました。 しかしこの「IR」は、逆に言うとものすごく重い負担を背負うことにもなります。つまり「IR」にすると、いろいろなエンターテインメントや展示施設の投資金額が大きくなり、それを維持するための固定経費もものすごくかかるわけです。ラスベガスのストリップ地区には43のカジノがありますが、カジノ収益の30%が「コンプ」に費やされており、最終利益は15億ドルの大赤字です。 しかもシンガポールの場合は、「IR」といってもカジノで8割を稼いでいます。カジノの稼ぎを元に、国際会議場の誘致を割安で行ったりして、お客さんを集めるわけです。そうすると、このビジネスモデルというのは、カジノにたくさんお客さんが来てくれなければ成り立たない。そのためにさらに「コンプ」でいろいろなサービスを優待する形になるので、もしお客さんが減ってしまうと大きな赤字をかかえるような仕組みになっているわけです。
相次ぐアトランティックシティのカジノホテル破綻
貧困率は約30%と州平均の3倍
カジノは街を再生しなかった
ニュージャージー州のアトランティックシティはラスベガスに次いでアメリカ第2位のカジノの街です。1978年にカジノをつくって、それ以来カジノで成功した街ということで日本のカジノ推進派がこぞって取り上げます。カジノのお金で大成功じゃないかと言うわけですね。 しかしこのアトランティックシティは、今はほとんど崩壊状態になっています。今年1月にアトランティッククラブというカジノホテルが閉鎖しました。6月にレベルという最新のカジノホテルが経営破綻して8月に閉鎖しました。それからショーボートというところも8月に閉鎖して、トランププラザも9月16日に閉鎖。トランププラザを経営していたトランプエンターテイメントが、経営破綻をついこの間申請しました。そこが保有しているトランプタージマハルというカジノホテルもあるのですが11月に閉鎖するだろうと言われています。 そうすると、カジノで成功したと言われているアトランティックシティに12もあったカジノホテルが、たった1年で5つ破綻してなくなるという事態になっているのです。なかでもレベルは2年前に新規オープンしたばかりの期待の大型IRカジノだったのに閉鎖に追い込まれています。 さらに人口4万人足らずのアトランティックシティには年間3,000万人を超える観光客が訪れましたが、アトランティックシティは貧しいままです。世帯平均所得は州平均の4割で貧困率は約30%と州平均の3倍です。カジノは街を再生しなかったのです。
カジノ合法化がもたらしたもの
こうしたアトランティックシティにおけるカジノの衰退は、アメリカにおける各州でのカジノ合法化の影響によるものです。ニューヨーク州が2004年、ペンシルバニア州が2007年、メリーランド州が2010年にカジノを合法化して、それぞれカジノをつくり、とりわけペンシルバニア州がアトランティックシティに近い州都フィラデルフィアにカジノをつくったのです。 この影響を大きく受けたわけですが、ニュージャージー州はそういう動きに対して無為無策だったわけではありません。 ニューヨーク州メリーランド州のカジノはスロットだけで、ペンシルバニア州のカジノは「IR」ではなかったので、ニュージャージー州は「IR」に切り替えることで生き残ろうとしました。その生き残り策の切り札としてレベルという最新のホテルを24億ドルかけてさらに2億ドルほどの税金をつぎ込んで2012年春にオープンさせたのです。 これがたった2年で経営破綻。他のホテルはどうなっているかネットで調べたら、どれもこれも立派な「IR」です。11月に潰れるといわれているトランプタージマハルなんて、大きなアリーナが3つぐらいあって、さらに展示施設もいくつもある。ようするにアトランティックシティは周辺の普通のカジノに対抗して「IR」で生き残ろうとしたけれど破綻してしまったということです。維持費がかかる「IR」は、お客さんが減ってしまうと大きな赤字を生みだし破綻するのも早いのです。
固定経費や維持費が重荷に
たとえば、ボルガタというカジノホテルがアトランティックシティにあるのですが、ここは収益の4分の1を先ほど紹介した優待サービスの「コンプ」に使っています。 トロピカーナというところは、なんとか収益を増やしていますが赤字です。結局、「IR」というのは、いろいろ揃えて優待サービスでお客さんを引っ張ろうとするので、固定経費や維持費がかかる。だから、「IR」はいつもたくさんお客さんが来ないと成り立たないし、お客さんが減るとすぐに赤字に直結するような仕組みになっているのです。 その結果、アトランティックシティは「IR」で周辺のカジノに対抗しようとしたけれども上手くいかなかったというわけです。
あらゆる階層を食い物にして成立する日本のカジノ
同じように、安倍政権が推進しようとしている「IR」型の日本のカジノも、とにかくたくさんお客さんが来なければ成り立ちません。カジノ推進派は、「日本にカジノができると400億ドル(4兆円)のマーケットができる」などと言っています。 これはアメリカのカジノでお客さんの平均負け額が年間約4万円なのですが、それで計算して1億人が日本のカジノに足を運んで、1年間に1人平均4万円負けてくれなければ4兆円のマーケットは成り立たないものです。 当然、それで利益を上げようとすれば、ものすごい大量宣伝になるでしょう。とにかくあらゆる階層に大宣伝して、お年寄りもターゲットにする。「コンプ」で大サービスしてどんどんカジノの食い物にしていくことになるでしょう。 ヨーロッパのカジノというのは、いわゆる会員制が基本です。それも公営が多くて、いわば営利優先にはならない形で運営されています。ところが、安倍政権が狙っている「IR」型のカジノというのは、営利優先で、情け容赦なく日本人の懐を食い物にしていくようなものになるのです。 【鳥畑与一静岡大学教授談】