昭恵の森友学園支援は公務だった 小林よしのり

■ 政治
昭恵の森友学園支援は公務だった
小林よしのり

東京新聞安倍昭恵の著書「『私』を生きる」で、昭恵自身が活動の「公私」の区別を分けていたことを報じている。
「自分がいいと思う活動団体を支援したり」することは「総理夫人の仕事」で、居酒屋UZUの経営などは「完全に私人としての仕事もある」としていたという。
この認識は正しい。?
安倍昭恵の、森友学園の強力支援は「総理の仕事」であり、「公務」だったということだ。
安倍首相の側近に森友学園建設で、昭恵夫人をバックアップする体制が作られていたのだろう。
テレビもこれを報じてほしいし、野党は昭恵夫人の背後にいる体制を追及してほしい。

■ 政治
近いうちに逮捕もありえる籠池氏、まだ「隠し玉」はあるのか?
田原総一朗

3月23日、衆参両院予算委員会で、森友学園理事長の籠池泰典さんの証人喚問があった。
籠池さんは、大阪の国有地払下げ問題で渦中の人物だ。この問題の土地の価格だが、鑑定価格は9億5600万円だった。そこから、「ゴミ撤去費」として約8億円を差し引いて、1億3400万円になったという。これには籠池さんも、「びっくりした」「神風が吹いた」と語っている。土地の価格が安くなったばかりではない。10年間の定期借地権として契約できてもいたのだ。
先日も書いたが、やはりこの問題は大騒動になってきた。籠池さんは、首相夫人の安倍昭恵さんから、「安倍晋三から」の寄付金として、100万円を受け取ったと証人喚問で証言していた。昭恵さんは、これを否定している。ただし、寄付金自体は違法ではない。
さらに籠池さんは、10年の定期借地権を50年に延長できないか、昭恵さんに依頼したと述べた。ただし、総理夫人付の政府職員から、「ご希望に沿うことはできない」という返事をファックスでもらったという。このファックスも公開された。
籠池さんは、この国有地の問題で相談したという政治家の名前を次々と口にしている。自民党参議院議員柳本卓治さん、日本維新の会参議院議員、東徹彦さん、大阪府知事松井一郎さん……。ただし、籠池さんは、あまり影響のない政治家の名前しか出していない。
自民党ははじめ、籠池さんの参考人招致を拒んでいた。これは籠池さんの証言で、大物の名前が出るのを怖がったからだ。あえて今回、籠池さんは「大物の名前」を出さなかったのではないか、と僕は思う。つまり、隠し玉として持っているのだと。彼は戦略的で、何か計算してるんじゃないかと、僕は感じるのだ。
僕が大きな問題だと思うことがある。民間人である籠池さんが証人喚問であるのにかかわらず、24日の2人の財務省官僚、迫田英典国税庁長官と武内良樹国際局長は、嘘をついても罰せられない。「証人喚問」ではなく「参考人招致」だからだ。これでいいのか。さらにいえば、当事者である昭恵さんも証人喚問すべきではないかと思う。
籠池さんは、国や大阪府などに対して、3通の異なる建設費を、使い分けて申請している。これは私文書偽造、あるいは詐欺罪に問われる可能性が高い。僕は、近いうちに籠池さんの逮捕もあり得ると見ている。
それにしてもリクルート事件ロッキード事件など、過去にもさまざまな事件があった。

こうした事件が起きたとき、かつての自民党であれば、党内での調査、究明を行おうという動きがあった。党のなかに派閥があり、自浄作用が働いたのである。
いまの自民党には、その力がもうない。みんな安倍カラー一色になっている。「バスに乗り遅れるな」だ。やはり、そのすべての元凶は、小選挙区制ではないか、とぼくは思っている。多様な考えの議員が共存できる、中選挙区制に戻すべきでないか。今回の問題で、僕は思いを強くした。

森友学園事件の衝撃が永田町内に余波を生んでいる。
石破茂前地方創生担当相は3月17日、自身のブログ上で政府の説明を「説明していないのと同じこと」と指摘した上で、「与党議員がこんなことではいけないと自戒を込めて思っています」と綴った。「ポスト安倍」の筆頭格が現政権の対応に苦言を呈した恰好だ。
3月23日には「森友学園」理事長の籠池泰典氏が証人喚問されるが、この動きに乗じて自民党内には「安倍後」を見据えた動きに注目が集まりはじめている。一方、政権中枢は引き締めに躍起だ。
安倍政権の緊張感を物語るエピソードがある。3月9日、内閣府政務官だった務台俊介衆議院議員が辞表を提出したのだ。
務台氏は8日夜、東京都内で開催した自身の政治資金パーティで「長靴業界はだいぶ儲かったんじゃないか」と発言。昨年9月、豪雨被害の視察で岩手県岩泉町を訪れた務台氏は、長靴をはいていなかったことから水たまりを職員に「おんぶ」されて渡り、批判を浴びていた。
同氏は発言発覚後も「職責をまっとうしたい」と続投の意を示していたが、翌9日の夕刻には辞表提出の運びとなった。
何が起きていたのか。政治部記者が解説する。
「実は9日の朝、菅義偉官房長官が本人に『いい加減にしろ!』と怒鳴っていました。森友学園問題で政権に向かい風が吹いている中、こうした言動は国民の琴線に触れる。支持率下落に拍車がかかってしまうことを菅さんは何よりも警戒したのです」
危機管理にもっとも神経を尖らす菅氏による“務台瞬殺”だ。
森友学園の籠池理事長らから国有地の取得を巡って「現金のようなものを差し出された」と会見で明かした鴻池祥肇元防災担当相(麻生派)の動きも奇妙であるという憶測を方々で呼んでいる。
というのも、氏が麻生太郎副総理の側近であるからだ。森友学園事件の騒動がおさまらぬ中で、「万が一のことがあれば自分が」と考えている麻生氏のために鴻池氏が一肌脱いだのではないか、という見立てだ。
森喜朗氏のようなキングメーカー狙う麻生太郎氏】
真相は不明だが、麻生氏のただならぬ動きは、大宏池会構想にもあらわれている。
宏池会構想とは、自民党内の谷垣グループ(有隣会)が麻生派為公会)と合併し、さらに岸田派(宏池会)とも合併することで大宏池会という現在の最大派閥である細田派(清和政策研究会)に匹敵する大勢力を誕生させるというもくろみのこと。
一部では、民進党との二大政党体制を目指すのではなく、55年体制のように自民党内の派閥間で切磋琢磨し政権を取り合う体制をつくるべきだと麻生氏が考えてのこと、と報道されたが、それはあくまで表面的な話だ。
麻生氏の真の狙いについて、自民党関係者が説明する。
「麻生さんは、もし大宏池会が誕生した日には現宏池会の親分である岸田文雄外相がトップに立ってもいいと言っているんです。先般、麻生派甘利明議員を招き入れましたが、あれには深い意味が隠れている。『うちには甘利のような大物が入ったけど、大宏池会が誕生すればあなたがトップに立っていいんだよ』というメッセージを岸田さんに送ったと言えるのです。麻生さんの真の狙いは、森喜朗元首相のような、裏で物事を動かすキングメーカーになることにほかなりません」
宏池会構想に前のめりなのは佐藤勉総務相らだ。その狙いは何なのか。
「佐藤さんは麻生政権下で総務大臣にしてもらったことで麻生さんに恩を感じている。実質的には麻生派の一員です。いま大宏池会構想に向けて若手議員を集めて勉強会をやったりしていますが、そのことは岸田さんにも内密にしている。もちろん岸田さんは気づいていますが」(同)
「安倍後」を狙う面々の動きが活発化しはじめている。
(野中大樹・編集部、3月24日号)