原発は安全ではないのです

5204…高浜原発の再稼働差し止めを命じた福井地裁の決定要旨…
2015/04/15 20:49

中日新聞記事より
詳報
高浜原発の再稼働差し止めを命じた福井地裁の決定要旨
2015/4/14
 関西電力高浜原発3、4号機の再稼働差し止めを命じた14日の福井地裁の決定要旨は次の通り。
 【主文】

 高浜原発3、4号機を運転してはならない。

 【高浜原発の欠陥】

 原発で発出されるエネルギーは膨大で、内部に貯留されている放射性物質も極めて多量なため、いったん発生した事故は拡大する。短時間で収束する他の技術の事故とは異なり、原発に内在する本質的な危険だ。

 地震が起きた場合、速やかに運転を停止し、核燃料を冷却し続け、放射性物質が外部に漏れ出さないようにしなければならない。止める、冷やす、閉じ込めるという三つがそろって初めて安全性が保たれる。高浜原発には冷やす機能と、閉じ込める構造に問題がある。
 【地震想定の信頼性】

 原発への到来が想定される最大の地震動である「基準地震動」の適切な策定は、耐震安全性確保の基礎であり、それを超える地震はあってはならない。しかし、全国20カ所に満たない原発のうち4カ所に、過去10年足らずの間に想定を超える地震が5回到来した事実を重視すべきは当然だ。

 その4カ所と同様に、高浜原発でも過去の地震の記録と周辺の活断層の調査分析という手法により地震想定がなされた。活断層の評価方法にも大差はないため、高浜原発地震想定だけが信頼できるという根拠は見いだせない。地震の平均像を基に、基準地震動を策定することに合理性は見いだしがたく、理論面でも信頼性を失っている。

 【施設損壊の危険】

 基準地震動を超える地震では施設が破損する恐れがあり、その場合、事態の把握の困難性や時間的な制約の下、収束を図るには多くの困難が伴い、炉心損傷に至る危険が認められる。

 運転開始時の基準地震動は370ガルだったが「安全に余裕がある」との理由で、根本的な耐震補強工事がないまま550ガルに引き上げられ、さらに新規制基準の実施を機に700ガルになった。安全性確保の基礎となる基準地震動の数値だけを引き上げることは社会的に許容できず、関電の言う安全設計思想とも相いれない。

 基準地震動を下回る地震でも外部電源が断たれ、ポンプの破損により主給水が断たれる恐れがあることは関電も自認している。外部電源は緊急停止後の冷却機能を保持するための第1のとりでで、主給水も冷却機能を維持する命綱だ。いずれかが一定時間断たれれば大事故になるのは必然で、基準地震動を下回る地震でも双方が失われる恐れがある。主給水により冷却機能を維持するのが原子炉本来の姿なのに、主給水を安全上重要ではないとする関電の主張は理解に苦しむ。安全確保に不可欠な設備には、ふさわしい耐震性を求めるのが健全な社会通念だ。基準地震動未満の地震によっても冷却機能喪失による炉心損傷に至る危険がある。

 国内に地震の空白地帯はない。基準地震動を超える地震が高浜原発で起きないというのは、根拠に乏しい楽観的見通しに過ぎない。それは現実的で切迫した危険といえ、施設の在り方は原発の本質的な危険性についてあまりにも楽観的だ。
 【使用済み核燃料】

 高浜原発の使用済み核燃料は原子炉格納容器外の使用済み核燃料プールと呼ばれる水槽内に多量に置かれているが、プールから放射性物質が漏れたときに敷地外に出ることを防ぐ堅固な設備はない。

 堅固な施設で閉じ込める技術は中の核燃料を外部の事故から守るという側面もあるため、使用済み核燃料プールも原子炉格納容器と同様に防御する必要がある。むき出しに近い状態になっている現状は、設備を設けるために膨大な費用が掛かることに加え、深刻な事故はめったに起きないだろうという見通しに基づいている。国民の安全を最優先する考え方ともいえない。

 【原発の安全性】

 高浜原発の施設や技術には、多くの脆弱(ぜいじゃく)性がある。脆弱性を解消するには/(1)/基準地震動を大幅に引き上げ、それに応じた根本的な耐震工事の実施/(2)/外部電源と主給水の耐震性強化/(3)/使用済み核燃料を囲む堅固な施設の設置/(4)/使用済み核燃料プールの給水設備の耐震性強化―という方策が取られるべきだ。中央制御室に放射性物質が飛ぶ危険性もあり、防御能力の高い免震重要棟や、緊急時に事態を把握するための計測装置も必要だが、どちらも設置されていない。

 【新基準の合理性】

 高浜原発原子力規制委員会の策定した新規制基準を満たしているが、安全性が確保されていない。免震重要棟は設置予定だが猶予期間があり、地震が人間の意図とは無関係に起こるものである以上、規制方法に合理性はない。周辺住民の生命に重大な危害が起きないように、十分な安全性の審査が行われるべきだ。

 基準には、適合していれば万が一にも深刻な災害は起きないといえる厳格さが求められる。現在の新規制基準は緩やかで合理性がなく、適合しても安全性が確保されたとはいえない。適合するか否か判断するまでもなく、原発から250キロ圏内に住む住民は、原発の運転によって人格権を侵害される具体的な危険があると推測される。

 【差し止めの必要】

 原発の運転差し止めによって、原子炉内の核燃料は徐々にエネルギーを失い、時間単位の電源喪失で重大な事故に至ることはなくなる。新たな使用済み核燃料の増加も防ぐことができる。運転差し止めは、危険性を大幅に軽減する適切で有効な手段だ。

 原発事故によって住民は取り返しのつかない損害を被る恐れが生じる。規制委も運転を許可しており、訴訟の結論を待つ余裕はない。現在の停止状態を維持するべきだ。
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