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社説
隠蔽の闇は晴れない 日報隠し特別監察
2017/7/29 紙面から
 防衛省自衛隊の情報隠しが特別監察で認定された。隠蔽(いんぺい)体質の闇は深い。辞任した前防衛相だけでなく最高指揮官の安倍晋三首相の責任も免れまい。
 情報隠しが認定されたのは、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊部隊が作成した日報に関してである。
 防衛監察本部の特別防衛監察によると、情報隠しは昨年七月、現地部隊が作成した全文書の情報公開請求があった際、陸自中央即応集団の副司令官が日報の存在を確認しながら、開示対象からの除外を指導したことがきっかけだ。
 その後、組織ぐるみで情報隠蔽にかかわることになる。
「戦闘」「銃撃戦」明記
 昨年七月、陸自部隊が派遣されていた南スーダンの首都ジュバでは大規模な衝突が発生し、二百七十人以上の死者が出ていた。
 その後、公開された日報にも大統領派と反政府勢力との間で「戦闘が生起した」ことや、自衛隊の宿営地近くで「激しい銃撃戦」が起きたことが記述されている。派遣部隊を取り巻く状況は、極めて緊迫していたに違いない。
 日本がPKO部隊を派遣するには、紛争当事者間で停戦合意が成立していることや、派遣先の国や紛争当事者が自衛隊の派遣に同意していることなど、参加五原則を満たすことが必要だ。
 当時のジュバは「停戦合意」が成立しているとはとても言えず、直ちに部隊を撤収しなければならない情勢だったにもかかわらず、安倍内閣は撤収させるどころか、派遣期間を延長し、交代部隊を現地に送った。首相は現地情勢の緊迫について正確に報告を受けていたのか。報告を受けた上で、戦闘は深刻でないと判断したのか。
 当時、現地での「戦闘」が公表されていれば派遣継続はすんなり認められなかったのではないか。
派遣継続望んだ政権
 安倍内閣には派遣継続を望む理由があった。派遣部隊に「駆け付け警護」と「宿営地の共同防衛」の任務を与えることである。
 これらの任務は二〇一五年九月に成立が強行された安全保障関連法で可能になったが、自らを守るという武器使用の一線を越え、任務遂行のための武器使用が可能になる。国是である専守防衛を逸脱しかねない危険な任務だ。
 自衛隊の国軍化を目指す首相にとって、自衛隊により積極的な武器使用を認める安保関連法の既成事実化は、政治目標とする憲法改正に向けた一歩だったのだろう。
 陸自による日報隠しは、政権内に蔓延(まんえん)する派遣継続を望む空気も動機の一つだったのではないか。
 問題は、こうした自衛隊の運用が、派遣先の情勢を国民に隠して行われたことである。かつて旧日本軍が、戦況をめぐり国民に真実を伝えず、破局的な戦争を継続して、国内外に多大な犠牲を強いた苦い歴史を彷彿(ほうふつ)とさせる。
 特別防衛監察は、情報公開や文書管理の適正化を促してはいる。それは当然だが、国民に真実を隠し、憲法を逸脱しかねない活動を自衛隊に強いたことにもメスを入れなければ隠蔽の闇は晴れない。
 自衛隊憲法上、軍隊とは位置付けられていないが、世界でも有数の火力を備える実力組織でもある。国民が選んだ国会議員を通じて「文民統制」を受けるのは当然だ。国民に情報を隠して活動を拡大することは許されない。
 稲田朋美防衛相は、日報隠しへの防衛省自衛隊の組織的な関与が認められたとして監督責任を取って辞任したが、今月の都議選では防衛省自衛隊自民党候補の支援に政治利用する発言をした。
 本来、首相は直ちに罷免すべきだった。任命責任は免れない。辞任は遅きに失したが、八月三日にも予定する内閣改造直前での辞任を追及逃れに利用すべきでない。
 監察結果は陸自での日報データ保管を、今年二月の会議で稲田氏に報告した「可能性」に触れた。稲田氏は否定しているが、双方の言い分が違うのなら、国会で徹底的に究明する必要がある。
 安倍政権は速やかに臨時国会の召集もしくは閉会中審査に応じ、稲田氏と関係者を参考人招致した集中審議を開くべきである。
信頼回復への一歩を
 創設から六十年を超えた自衛隊は、海外で武力の行使はしない専守防衛に徹し、災害派遣などを通じて国民の高い評価を得ている。情報隠しは積み上げてきた国民の信頼を裏切る行為であり、二度とあってはならない。
 どんな防衛相でも、自衛隊がその統制に服するのが文民統制ではあるが、稲田氏が安全保障政策に精通していなかったことも、混乱の一因だろう。後継には経験豊富な人材の登用を望みたい。新しい防衛相と事務次官の下で、再発防止策を徹底し、信頼回復への一歩を大きく歩みだしてほしい。

■ 政治
焦点:安倍改憲シナリオ、支持率低下で自民内に異論 解散観測も  
ロイター

[東京 31日 ロイター] - 安倍晋三首相の描く改憲シナリオの実現に暗雲が立ち込めてきた。内閣支持率の低下を背景に、自民党内で改憲案の早期とりまとめに異論が出てきているためだ。連立与党・公明党も慎重姿勢で、2020年の改正憲法施行という安倍首相の目標達成のハードルは大幅に上がっている。これに対応するように、自民党内では今秋にも衆院解散があるとの観測が浮上。安倍首相の政治的な判断への注目度が、にわかに高まってきた。
<支持率低下、改憲発議困難の声>
「これからは、総裁だから何でもごもっともとはいかなくなる」──。自民党憲法改正推進本部顧問の野田毅衆院議員は、同党内にくすぶる安倍首相への空気を代弁してこう述べた。
安倍首相は5月3日、憲法改正を求める集会にビデオメッセージを公表し、2020年を新しい憲法が施行される年にしたいと表明。
6月24日には、秋の臨時国会中に国会の憲法審査会で自民党憲法改正案を提案したいと表明。憲法改正に関する党内手続きの加速化にリーダーシップを発揮する意向を示した。
首相側近の下村博文自民党幹事長代理は6月25日、自民党改憲案を11月上旬までにまとめる必要がある述べた。
しかし、7月2日の都議選で自民党が大敗し、その後の世論調査内閣支持率が急落すると、自民党内の憲法改正に対するムードは、大きく変わってきた。
野田氏の発言は、支持率下落による安倍首相の求心力低下がはっきりしている中で、当初の安倍首相の目論見通りに憲法改正の手続きを進めるのは難しくなっているとの見立てを示したといえる。
ある自民党議員も「安倍内閣の支持率が大幅に低下している中で、憲法改正の議論を強力に推し進めるのは難しいとの党内のムードが急速に強まっている」と話す。
というのも、改憲内容を巡って党内が一致しておらず、安倍首相の提案がすんなり通るのか不透明となってきたことがある。
安倍首相は焦点である9条について、戦争放棄を明記した1項、戦力不保持と交戦権の否定を規定した2項を残して、自衛隊を認める3項の新設を提案している。
ただ、自民党の船田元・憲法改正推進本部本部長代行は「党内での一番の相違点は、9条2項を残すか、なくすかという点。 自衛隊は国際的にみて戦力だと言われているし、それにきちんと答えて軍隊として位置付け、自国を守ることを完璧にしたい(だから2項は廃止する)という人が、自民党内にはかなりいる」と述べ、党内調整に時間がかかるとの見方を強くにじませた。

さらに連立与党・公明党のサポートが得られるのか不明な中で、国会での憲法改正発議の手続きが前に進まない可能性が高まる。
同党の山口那津男代表は、今月14日のロイターとのインタビューで「今の憲法を変えてもらいたいと強く望んでいるかというと、今そういう国民の声があるわけではない」と明言。改憲に積極的な安倍首相との「温度差」がかなり鮮明になっている。
憲法改正には、衆参両院でそれぞれ総議員の3分の2以上の賛成を得て発議することが必要。公明党が慎重姿勢を崩さない場合、改憲の発議のハードルがかなり上がることになる。
ただ、安倍首相に近い自民党執行部の中には、秋の臨時国会自民党の改正案を出すという予定に変わりはないと「既定方針堅持」を強調する声もある。
<総裁3選厳しく、来年通常国会に提出必須>
支持率低下は、安倍首相の党総裁3選シナリオの実現にも大きな影を投げかけている。
野田氏は、安倍首相の総裁3選シナリオについて「そういう話だった」と述べた。あえて過去形としたことに触れ「可能性があるというだけ。そうなるかはわからない。今は非常に難しくなったという見方が増えている」と、党内情勢の変化に言及した。
また、内閣支持率の低下は、憲法改正の最大のハードルである国民投票における過半数の賛成票確保に大きな障害となりかねない。
船田氏は「それは大変な危険を伴う。もし、(国民投票での過半数確保に)失敗したら、同じ状況での再提出はできないだけでなく、政治的なダメージの方が大きくなる」と指摘。内閣の支持率を上げない限り、憲法改正の実現は難しいとの見通しを示した。
憲法改正のハードルが上がるにつれ、自民党内では早期の衆院解散・総選挙を安倍首相が断行するのではないかとの観測が急速に広がっている。
憲法改正が難しくなってきたのであれば、安倍内閣の継続を最優先とし、衆院選での野党共闘や、先の都議選で躍進した都民ファーストの国政進出の準備が整う前に解散した方が「得策」との戦術的な見方だ。
安倍首相は、支持率低下の下でも改憲に取り組むのか、それとも早期解散で改憲を断念するのか。日本の政治情勢は、ここに来て一気に緊迫の度合いを高めている。
(中川泉 リンダ・シーグ 取材協力:宮崎亜巳 竹本能文 編集:田巻一彦)


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お尻ペンペン逆効果 日米チーム調査 幼児、問題行動リスク高く
2017/7/31 夕刊
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 悪いことをしたときにお尻をたたく幼児への体罰は、約束を守れないなどの問題行動につながり、しつけとして逆効果−。そんな研究結果を藤原武男・東京医科歯科大教授(公衆衛生学)やイチロー・カワチハーバード大教授らの研究チームが、国際子ども虐待防止学会の学会誌に発表した。
 虐待には至らない程度の、しつけとしての体罰が成長に悪影響を及ぼすかどうかを巡っては議論があるが、今回の結果は問題行動につながる可能性を示すものとして注目される。
 チームは、厚生労働省子育て支援策などへの活用を目的に二〇〇一年生まれの人を追跡している「二十一世紀出生児縦断調査」のデータ約二万九千人分を使い、三歳半の時にお尻をたたくなどの体罰の有無が、五歳半に成長した時の行動にどう影響しているか分析した。
 その結果、三歳半の時に保護者から体罰を受けていた子どもは、全く受けていなかった子どもに比べ、五歳半の時に「落ち着いて話を聞けない」という行動のリスクが約一・六倍、「約束を守れない」という行動のリスクが約一・五倍になるなど、問題行動のリスクが高いことが分かった。体罰が頻繁に行われるほど、リスクは高くなっていた。
 分析では、家庭環境や本人の性格の影響が出ないように統計学的な調整をした。
 家庭での子どもへの体罰スウェーデンなど約五十カ国で法的に禁止されている。藤原教授は「お尻をたたくことは日本では社会的に許容されている部分があるが、今回の結果からは、問題行動につながる行為だと言える。大人が一時的な感情を子どもにぶつけているだけで、しつけにはなっていない」と語る。
体罰の悪影響明確>

 西澤哲・山梨県立大教授(臨床心理学)の話 虐待に至らない程度の体罰が子どもに悪影響を及ぼすことを明確に示した非常に重要な研究だ。低頻度でも影響があるという結果にも注目したい。しつけは子どもが自分で自己調整能力を高めるための支援であり、恐怖で行動を制御しようとする体罰は逆効果だ。子どもが悪いことをしたら、親はその理由を理解し、どう支援するか考えてほしい。