10:伏せ字は筆者。

■ 政治
共謀罪の監視対象はやっぱり私たち テロ対策とは無縁だった
猪野 亨

 共謀罪法案について参議院で審議が行われていますが、「テロ等準備罪」などという国民欺しの名称などをつけ、あたかも私たち国民が共謀罪の適用対象にならないかのような装っているいかがわしい法案です。

 ここに来て、金田法務大臣ではなく、法務省の林刑事局長が市民も対象になりうると答弁で認めました。

法務省局長「組織犯罪集団以外の処罰もありうる」」(NHK2017年6月8日)
「「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する法案をめぐり、法務省の林刑事局長は、組織的犯罪集団の構成員ではないものの密接な関係にある者が組織的犯罪集団による重大な犯罪の計画に加われば、処罰の対象になりうるという認識を示しました。」

 もともと「組織犯罪集団」とは言いながら、その定義は曖昧で、実際にも2人いれば「組織」になり得るものですから、要件としてあってないようなものでした。

 「組織犯罪集団」とは暴力団のようなものだけを指す概念ではありませんから、必然的にその概念は拡がるし、無限定になるのです。

 そしてようやく法務省は、誰もが対象になりうるということを認めたのです。

 しかも、林刑事局長が例に挙げたのはこれです。

暴力団とともに悪徳な行為をしている不動産会社の社長が暴力団の組長らと暴力的な地上げをしてテナントビルを建て、みずからも利益を得ることを計画するケース」

 計画段階で露呈しなければ共謀罪としての立件はできませんが(準備行為は、下見をしたとかいうものでも足りますから何とでもなります。)、さて、どうやって、これを立件するのでしょう。

共謀罪賛成派の弁護士が持ち出した事例 これでどうしたら立件ができるの? 次は捜査手続きの充実、怪しいと思ったら監視するからね」



 何よりも、そもそも挙げられた事例がテロとは全く無関係なものです。

 暴力団が主体かどうかは、「組織犯罪集団」という概念のもとでは必然性はありませんから、その意味でもこの共謀罪の成立には、全くと言って良いほど限定はなされていないのです。

 それにしても、未だかつて具体例として「テロ」を題材にしたものを見たことがありません。加えて立件の過程を説明したものについては全く見たことがありません。

 ちなみに安倍政権は、国際組織犯罪防止(TOC)条約締結を大義名分にしていますが、これも違法収益に関するもので、テロ対策のものではありません。ここでも都合良くテロという言葉を使っているのです。

共謀罪 TOC条約のために必要と政府に代わって主張する人たち 成川毅氏の無責任な発言」

 立件のためには事前に情報を得ていなければならないということは、監視社会になることが必然だということです。