NACHISUトランプの今

■ 政治
トランプ氏、入国禁止差し止め命令で司法を批判

小宮山洋子

トランプ大統領が、イスラム圏7ヶ国からの入国を禁止した大統領令について、ワシントン州憲法違反で無効だとして差し止めを求めていた訴訟で、3日に同州シアトルの連邦地方裁判所は、大統領令を一時差し止める命令を出しました。

これによって、足止めされていた人たちがアメリカに入国でき、4歳の女の子が心臓手術のため、またアメリカの大学で学んでいる学生が授業を受けるため等、多くの人が、この一時差し止めの間にアメリカに入国しています。

トランプ政権は、4日に、大統領令を一時差し止めたワシントン州の連邦地裁命令を即時停止するよう求めて、サンフランシスコ連邦高裁に上訴しました。

これに対して、連邦高裁は4日、即時停止を認めず、違憲判断を求めたワシントン州などには5日中に反論の書面を、政権側には6日午後までに反論への答弁書を提出するよう指示しました。

当面、法廷闘争が続きそうです。

大統領になっても暴言を放っているトランプ氏は、ツイッター

「このいわゆる判事の意見はばかげており、(判断が)ひっくり返されるだろう」

「1人の判事によって禁止令が撤回されたため、多くのとても悪い、危険な者たちがわれわれの国に流れこんでくるだろう。ひどい判断だ。」

と司法を批判しています。

しかし、この7ヶ国の人たちは、アメリカ人を1人も殺していない、一方、テロリストがいた中東の国でもトランプ氏がホテルをもっているなど経済活動をしている国は含まれていないなど、その点も恣意的と指摘されています。


トランプ大統領の姿勢は、

三権分立」を脅かすものです。

それも理解していない人が、アメリカの大統領になってしまったことに、怖さを感じます。これ以上、アメリカを分断させる行動は、慎むべきだと思います。

■ 経済
会社から正社員が消える時:変わる米企業
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)

 企業の労働生産性を見る指標の一つである「1人当たり売上高」。米航空業界では、この指標でヴァージン・アメリカの右に出る企業はない。なぜなら、同社で荷物の配送や機材の整備、予約、ケータリングを含む数多くの業務を行うのは正社員ではなく、委託を受けた外部業者だからだ。
 「顧客と対面しない業務のすべてを外注するつもりだ」。昨年3月、デービッド・カッシュ最高経営責任者(CEO、当時)は株主に向けてそう話した。4月にはカッシュ氏が立役者となり、26億ドル(現在の為替レートで約3000億円)で同社をアラスカ航空に売却することで合意。この価格は2014年11月に実施した新規株式公開(IPO)時の2倍以上だ。カッシュ氏は昨年12月、売却が完了した時点で退任した。

プラット・アンド・ホイットニー(P&W)の部品配送業務を担うユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)の集荷・再配送施設 Photo: for The Wall Street Journal

 米国企業が従業員数の縮小にこれほど注力したことはかつてない。アウトソーシング(業務外部委託)の波は衣料メーカーの縫製部門を中国に、コールセンター業務をインドに移すなどしてきたが、いまや全米各地のほとんど全ての業種に波及しているようだ。
 米小売り大手ウォルマート・ストアーズの倉庫で荷物を下ろしている男女は米トラック輸送シュナイダー・ナショナルの物流部門が人材派遣業者から手当てした人々だ。米製薬大手ファイザーは昨年、臨床試験の大部分を外注した。
 米経済誌フォーチュンが毎年発表している「最も働きがいのある会社」ランキングで過去10年のうち7回トップに輝いたグーグルの親会社アルファベットは、関係者によると、正規社員と非正規社員がほぼ同数だという。 
 同社で働く約7万人の派遣・臨時・契約社員は自動運転車の試験や、製品の改良、マーケティング、データ関連プロジェクトなど数多くの業務を担当している。正社員は白いバッジをつけているが、非正規社員は赤いバッジをつけている。
様変わりする働き方や企業のあり方
 こうした傾向は企業や社員のあり方を劇的に様変わりさせつつある。企業にとっては雇用規模や人件費、福利厚生面で融通が利くようになる一方、従業員にとっては雇用の保障が弱まることを意味する。かつては郵便物の仕分け係から昇進を繰り返し、最後には幹部として眺めの良い角部屋のオフィスに出世するコースもあったが、今ではそれが難しくなった。



■ メディア
スーパーボウル2017〜多様性を訴えたCM:

アンチ・トランプに声を上げた企業

堂本かおる

 2月4日に開催されたスーパーボウル

白熱の試合とは別にCMも大きな注目を集めた。

トランプ政権のムスリム禁止令、メキシコ国境の壁建設令に危惧を抱いた大手企業数社が、非常に高価なCM放映枠でアメリカの多様性を訴えるCMを流した。

中にはメキシコからの違法移民を歓迎する内容のものさえあった。

 CMを再度観るためにアクセスが集中し、サイトが一時的にダウンした企業もあれば、トランプ支持層からのボイコット運動の対象となった企業もある。

以下はそのCMである。

いずれも英語に不案内でもほぼ内容が分かる構成となっている。

コカ・コーラ Coca Cola

アメリカの愛国歌「アメリカ・ザ・ビューティフル」を多言語で歌ったもの。

そもそもは2014年にオンエアされ、その時も批判が起り、今回はコカコーラ・ボイコットのハッシュタグが作られた。

2月6日現在、提訴には97社が参加。

グーグル Google

直接的なメッセージは含まれないが、多種多様な人々の楽しい日常生活の風景を描いている。

レインボーフラッグ、ユダヤ教徒が家の入り口に取り付けるメズーザーと呼ばれる祈りのための小さな門柱が意図的に写されている。

ミシュラン Michelin

これも政治的なメッセージはないが、さまざまな人種・民族・言語が現れ、同社のキャラクター、ミシュランマンが手でハートマークを形作っている。

 各企業がこうしたCMを流した理由はそれぞれだろう。

企業理念、もしくは設立者の個人的な理念として「アメリカは誰でも受け入れる」を信望しているケースもあれば、ほとんどのIT企業がそうであるように移民や非キリスト教徒なしでは成り立たない業種もある。

また、マイノリティ排除の保守性がユーザーに嫌われる業種もあるだろう。

 同時にアメリカ・ファースト派には彼らが思うアメリカの姿がある。

 ふたつの異なるアメリカは今、それぞれが信じる「アメリカの理想像」を掲げているのである。


バドワイザー Budweiser

ドイツからアメリカへの移民であったバドワイザーの設立者が「よそ者」として差別され、苦労しながらもアメリカでのビール醸造を目指す物語。

このCMもバドワイザー・ボイコットを引き起こした。


84ランバー 84 Lumber (オンエア・バージョン)

内装施行と建材の会社。メキシコからアメリカに不法移民として入国しようと長く辛い旅をする若い母親と少女の物語。

トランプが建設しようとしている「壁」を描写したオリジナル・バージョンはスーパーボウルの中継局フォックスから許可が降りず、有刺鉄線の柵のみが写っているバージョンをオンエア。

オンエア・バージョンの最後に「結末はウエブサイトにて」と書かれており、アクセスが集中してサイトは一時ダウン。


84ランバー 84 Lumber (オリジナル・バージョン)

「壁」の建設労働者と「壁」が登場。

6分近いミニムービーの赴き。

最後に「ここでは成功への意思は常に歓迎される」のメッセージが現れる。

保守系の新聞は「この会社はいったい何を考えているんだ?」という記事を掲載した。


エアビーアンドビー Airbnb

さまざまな人種・民族の顔を写し、「あなたが誰であれ、どこから来ようが、誰を愛そうが、または何を信仰しようが、私たちは皆、属すると信じます。

世界はあなたが受け入れるほど、より美しくなります」

エアビーアンドビーはアップル、フェイスブックマイクロソフトツイッター社などと共にトランプの政策に反する提訴を行っている。


■ 経済
会社から正社員が消える時:変わる米企業
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)

 企業の労働生産性を見る指標の一つである「1人当たり売上高」。米航空業界では、この指標でヴァージン・アメリカの右に出る企業はない。なぜなら、同社で荷物の配送や機材の整備、予約、ケータリングを含む数多くの業務を行うのは正社員ではなく、委託を受けた外部業者だからだ。
 「顧客と対面しない業務のすべてを外注するつもりだ」。昨年3月、デービッド・カッシュ最高経営責任者(CEO、当時)は株主に向けてそう話した。4月にはカッシュ氏が立役者となり、26億ドル(現在の為替レートで約3000億円)で同社をアラスカ航空に売却することで合意。この価格は2014年11月に実施した新規株式公開(IPO)時の2倍以上だ。カッシュ氏は昨年12月、売却が完了した時点で退任した。

プラット・アンド・ホイットニー(P&W)の部品配送業務を担うユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)の集荷・再配送施設 Photo: for The Wall Street Journal

 米国企業が従業員数の縮小にこれほど注力したことはかつてない。アウトソーシング(業務外部委託)の波は衣料メーカーの縫製部門を中国に、コールセンター業務をインドに移すなどしてきたが、いまや全米各地のほとんど全ての業種に波及しているようだ。
 米小売り大手ウォルマート・ストアーズの倉庫で荷物を下ろしている男女は米トラック輸送シュナイダー・ナショナルの物流部門が人材派遣業者から手当てした人々だ。米製薬大手ファイザーは昨年、臨床試験の大部分を外注した。
 米経済誌フォーチュンが毎年発表している「最も働きがいのある会社」ランキングで過去10年のうち7回トップに輝いたグーグルの親会社アルファベットは、関係者によると、正規社員と非正規社員がほぼ同数だという。 
 同社で働く約7万人の派遣・臨時・契約社員は自動運転車の試験や、製品の改良、マーケティング、データ関連プロジェクトなど数多くの業務を担当している。正社員は白いバッジをつけているが、非正規社員は赤いバッジをつけている。
様変わりする働き方や企業のあり方
 こうした傾向は企業や社員のあり方を劇的に様変わりさせつつある。企業にとっては雇用規模や人件費、福利厚生面で融通が利くようになる一方、従業員にとっては雇用の保障が弱まることを意味する。かつては郵便物の仕分け係から昇進を繰り返し、最後には幹部として眺めの良い角部屋のオフィスに出世するコースもあったが、今ではそれが難しくなった。


外部に委託される仕事はもはや、将来のスター社員を輩出する出世コースには入っていないからだ。
 企業にとって、従業員を外注業者に置き換える最大の魅力は経費コントロールだ。外部委託しておけば、新たなアイデアや必要な変化への対応に足りるだけの正社員を抱えるだけで済む。
勤め先はどこ?
米国の労働力に占める非正規社員の内訳(青:フリーの契約社員、赤:非常勤社員、黄:臨時社員、灰:派遣社員、緑:複数の企業と契約している派遣社員

 一方、労働者にとって、この変化は賃金の低下につながることが多い。また、「勤め先はどこ?」という単純な質問に答えるのが驚くほど難しくなることを意味する。外部委託によって作り出された労働力のこうした二層構造が、同一業務を担う労働者間の所得格差を広げていると指摘するエコノミストもいる。 
 政府機関が統計対象とする雇用カテゴリーにぴたりと当てはまるものがないため、こうした雇用形態で働いている人が具体的にどれほどいるのかは不明だ。エコノミストの推計は、全米労働力の3%から14%と幅広く、最大で2000万人と見積もられている。