富の異常な遍在は世界の破滅に向かう

慈善団体オックスファムは15日、世界で最も富裕な8人が、最も貧困な36億人分と同じ財産を所有しているとの推計を発表した。
オックスファムは今回の報告書について、これまで反論も出ていた統計方法が改善されたとし、貧富の差は「恐れられていたよりもずっと大きかった」とコメントした。
17日には、各国首脳や経営者などが集まり討議する世界経済フォーラム(WEF)がスイス東部ダボスで開幕する。
自由市場を擁護するシンクタンク、経済問題研究所(IEA)のマーク・リトルウッド氏は、オックスファムは富裕層の批判ではなく、成長促進策に焦点を置くべきだと語った。「オックスファムは『貧困と闘う』団体でありながら奇妙なことに、頭の中を占めているのは富裕層のことのようだ」。
リトルウッド氏は、「絶対的貧困の完全な根絶」を目指す人たちが意識を集中すべきなのは、経済成長を促進する方策だと述べた。
アダム・スミス研究所のベン・サウスウッド所長は、重要なのは世界の富豪が所有する財産ではなく、世界の貧困層の状況が年々改善していることだと語った。
「毎年、富に関するオックスファムの報告書で間違った考えを植え付けられている。データはクレディ・スイスのものできちんとしているが、解釈はそうでない」
オックスファムのグローバル渉外担当、カティ・ライト氏は、報告書が「政治、経済分野のエリートたちに働きかける助けになる」と語った。「ダボスが世界のエリートたちのおしゃべりの場にすぎないと分かっているが、集まる関心を利用しようと思う」と述べた。
英国のエコノミスト、ジェラルド・リヨンズ氏は、極端な富裕に焦点を当てるのでは「全体像がいつも捉えられるとは限らない」とし、「分配に充てられる経済規模の拡大の確保」に関心を持つべきだと指摘した。
一方でリヨンズ氏は、株主や経営幹部への報酬を増やすことにますます集中するビジネスモデルを持ち、格差拡大を促進しているとオックスファムが考える企業を特定し、批判するのは正しいと語った。
オックスファムのライト氏は、経済格差が政治の2極化を加速させていると指摘し、その例として米大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利や、英国の欧州連合EU)離脱を決めた国民投票を挙げた。
同氏は、「人々は怒っており、別の選択肢を求めている。どんなに一所懸命働いても自分たちの国の成長の分け前を得られないために、取り残されたと感じている」と語った。


世界で最も富裕な8人と資産額(フォーブス誌)
1位 ビル・ゲイツ氏(米国) マイクロソフト創業者 750億ドル(約8兆5000億円)
2位 アマンシオ・オルテガ氏(スペイン) ZARA創業者 670億ドル 
3位 ウォーレン・バフェット氏(米国) バークシャー・ハザウェイ筆頭株主 608億ドル
4位 カルロス・スリム氏(メキシコ) グルポ・カルソ創業者 500億ドル
5位 ジェフ・ベゾス氏(米国) アマゾン創業者 452億ドル 
6位 マーク・ザッカ―バーグ氏 フェイスブック共同創業者 446億ドル
7位 ラリー・エリソン氏 オラクル共同創業者 436億ドル
8位 マイケル・ブルームバーグ氏 ブルームバーグ創業者 400億ドル