侮辱罪正犯の二人を擁護する大阪府知事


大阪府警機動隊員差別発言

「人権上非常に問題」

法務省局長が答弁

2016年10月22日 11:20
米軍北部訓練場ヘリパッド
機動隊差別発言
機動隊

東、高江、国頭

 【東京】米軍北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設で、工事に反対する市民に対して機動隊員が「土人」「シナ人」などと発言した問題について、

法務省の萩本修人権擁護局長は20日の参院法務委員会で

「不当な差別的な言動はいかなるものに対してでもあってはならない。沖縄の人々に対する不当な差別的な言動も他の者に対するものと同様、人権擁護上非常に問題があると認識している」

と指摘した。

有田芳生氏(民進)の質問に答えた。

 特定の人種や民族への差別をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)をなくすための対策法が今年5月に成立している。

有田氏は沖縄県民が差別的に扱われていたと指摘し、機動隊の発言を問題視した。

萩本氏は発言の詳細を把握していないとしながらも

「警備中の警察官が指摘のような発言で相手方、周辺にいる方々を誹謗(ひぼう)中傷することは同様に人権擁護上も非常に問題があると認識している」

と述べた。

東京新聞記事より

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沖縄差別の歴史想起

機動隊員「土人」発言

2016/10/22 朝刊

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 大阪府警の機動隊員二人が沖縄県の米軍北部訓練場の工事反対派に「土人」と暴言を吐いた問題は、その言葉がとりわけ沖縄では差別と屈辱の歴史を想起させるだけに非難の声がやまない。暴言が表面化した後にあえて問題の隊員をツイッターで「出張ご苦労様」とねぎらってみせた松井一郎大阪府知事にも、怒りと失望の声が沸き起こっている。
 「土人」発言があったのは、十八日午前九時四十五分ごろ。ヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)建設工事を巡って工事反対派と警察のせめぎ合いが続く北部訓練場のゲート付近で、反対派の市民らがフェンスを揺らすなどして抗議していたところ、大阪府警から派遣された機動隊員が「どこつかんどるんじゃボケ、土人が」と吐き捨てた。「黙れコラ、シナ人」との暴言もあった。
 地元紙の報道を受け、沖縄県警が翌十九日に暴言の事実を明らかにした。派遣元の大阪府警は「公平、中立かつ丁寧な対応を心掛けるよう指導、教養を行っているところだが、今回の発言は不適正な内容だ」と釈明。菅義偉官房長官も記者会見で「不適切な発言」と断罪した。
◆戦前に「見せ物」
 「沖縄の人にとってショックな言葉だ」と憤るのは、石垣島出身の松島泰勝龍谷大教授(島しょ経済論)。「土人」という暴言は、一九〇三年に大阪で開催された博覧会でアイヌ民族や沖縄の人が見せ物として陳列された「人類館事件」を想起させるという。
 松島教授は「安倍政権は沖縄で基地反対の民意が出ているのに高江や辺野古の工事を強行し、力でねじ伏せようとしている。沖縄の歴史や文化をないがしろにしている。その本音が最前線の機動隊員まで伝わり、侮蔑的な言葉となって公になったということではないか。差別は今に始まったことではない」と構造的な問題を指摘する。
 実際に「土人」や「シナ人」という暴言は最近、心ない一部の人たちが沖縄の人々をののしる言葉としてインターネット上にしばしば登場している。
◆大阪知事「ねぎらい」に抗議多数 県民の怒り増幅
 一方、松井大阪府知事は十九日、「表現が不適切だとしても、大阪府警の警官が一生懸命命令に従い職務を遂行していたのがわかりました。出張ご苦労様」と自らのツイッターに投稿した。二十日にも「(隊員の)個人を特定されて鬼畜生のように(メディアで)たたかれるのは、ちょっと違うのではないかと思う」と記者団に主張。「反対行動はあまりにも過激なのではないか」と抗議側にも非があるとの見方を示した。
 これらの発言は、沖縄県民の怒りの火に油を注いだ。「ヘリパッドいらない」住民の会の田丸正幸さん(47)は「隊員の発言は許せないが、松井氏も差別を後押ししているようにしか見えない」。翁長雄志沖縄県知事は記者会見で「(隊員が)よく頑張ったというようなことになると、沖縄県からしたら、ちょっと筋が違う」と不快感を表明した。松井知事の身内の日本維新の会でも、沖縄県支部幹事長の当間盛夫県議が「党代表がこういう発言をしたことに、激しく抗議する」との声明を発表した。
◆府庁前200人集結
 大阪でも反発が相次いだ。労働組合などでつくる市民グループ「国民大運動大阪実行委員会」のメンバーら約二百人が二十一日、府庁前で、松井知事に発言の撤回や辞職を要求。府庁には同日午後五時までに千百四十二件の電話やメールが寄せられた。大半が「知事には辞職してほしい」など批判的内容だ。
 松井知事は同日、記者団に「発言は不適切だが、全国の警察官は沖縄に派遣され、行きすぎた抗議活動で衝突にならないようにやっている。労をねぎらうのは当然」と従来の見解を繰り返した。日本維新の会沖縄県支部の抗議にも「多分、誤解しているんだろう。沖縄の政治家の大事なことはあの大混乱を収めること」と逆に注文を付けた。
 差別問題に詳しい前田朗・東京造形大教授(刑事人権論)は「本来であれば、松井氏は自治体のトップとして『差別は許されない』というメッセージを強く打ち出すべきだったが、実際は機動隊員本人に代わって言い訳をしている。これでは『ここまでなら言っていい』『職務中なら言っていい』という風潮が広まりかねない」と指摘する。
 沖縄国際大の桃原(とうばる)一彦准教授(社会学)は「機動隊員の差別発言はヘイトスピーチに近い罵詈(ばり)雑言。すでに封印された『土人』という言葉が、今回の問題を機に、差別意識とともに再生産されていくことも心配だ」と危ぶむ。
◆暴言の2人を処分 大阪府警
 暴言を吐いた機動隊員二人について、大阪府警は二十一日、戒告の懲戒処分とした。二十九歳の男性巡査部長と二十六歳の男性巡査長で、監察室によると、二人は「差別的な意味や、歴史的な意味を持つ言葉とは知らなかった」と説明。「感情が高ぶり、つい発言してしまった。申し訳ない」と話している。監督責任を問い、現場で中隊長を務めていた男性警部(41)も所属長口頭注意とした。府警はこの三人の詳細な所属を明らかにしていない。
 (佐藤大、白名正和、沢田千秋)