都条例の作られ方

毎日新聞記事より

 東京都の舛添要一知事の辞職決定から一夜明けた16日、ひとまず都政の混乱は収束することになり、都職員からは安堵(あんど)の声が漏れた。一方で、都議会と対立しなかった舛添氏の退場による都政の変化への心配も聞かれた。

 舛添氏の公私混同問題で、知事の政策をサポートする政策企画局には今月9日までに、約3万2900件の抗議が電話やメールで寄せられた。

 同局職員は「やっと通常の業務ができる。都議会を解散し、改選後に不信任案再可決という最悪の事態も想定していたので、知事に『英断くださり、ありがとうございます』と言いたい」と語った。

 都幹部は「地方行政は本来、足元を見る仕事だが、知事がやったのは都市外交と美術館巡りだった。結局、目立つことが好きなタレント学者が政治家のように振る舞っていただけ」と切って捨てた。

 都政はここ十数年、自民都連幹事長の内田茂都議を中心に回ってきた実情がある。局長級幹部によると、事務方が重要な条例案や新規事業を承認してもらう時は、事前に内田氏に報告していた。猪瀬直樹・前知事はこうした「根回し」を嫌う傾向があったが、議会との関係がおおむね良好だった舛添氏は、内田氏への説明先行に文句を言わなかった。

 東京駅周辺地域を国家戦略特区とするための提案、税収が豊かな都を念頭に政府が打ち出した「自治体間の税収の格差是正を目的とする法人住民税の一部国税化」についても、事務方が内田氏と対応策を練ったという。

 この幹部は「新知事が従来の『東京の意思決定システム』を変えれば、都政は大混乱する。議会に刃向かわなかった舛添氏は、その意味で最高の知事だった」と振り返った。

 別の局長級幹部は「最近の都知事選は人気投票。著名人が『東京五輪返上』を訴えて当選するようなことがあれば、これまでの準備が水の泡になり大損失だ」と危惧した。

 舛添氏は16日、都庁に姿を見せたが、登庁・退庁時とも硬い表情で報道陣の問いかけに無言を貫いた。舛添氏には都条例に基づき約2200万円の退職金が支払われる。舛添氏は都議会に7月以降の給料を全額返上する条例案を提出していたが、辞職願提出の15日に撤回した。条例が成立して7月1日以降に辞職した場合は、その時点の給料がゼロのため、退職金も支払われないことになっていた。【篠原成行、川畑さおり、飯山太郎】