兵器・武器製造・原子炉運用は日本では、私人法人に許さず国有のみに

公共の福祉大原則による私権の制限がなぜ必要なのか、その理由について、原子炉を巡っては、以下の中日新聞記事に明白に記されています。

事故2年前に津波対策拒む 東電側、保安院要請に


2015/9/26 朝刊

 二〇一一年三月の東京電力福島第一原発事故をめぐり二年前の〇九年、原子力安全・保安院(当時)の審査官が、東電に具体的な津波対策を速やかに検討するよう求めたが、東電担当者が「原子炉を止めることができるのか」などと拒否していたことが、政府が公開した事故調査・検証委員会の「聴取結果書(調書)」で分かった。
 東電上層部が前年の〇八年七月、防潮堤建設など本格的な津波対策を先送りする方針を決めていたことは知られているが、東電が対策の必要性を認識しながら保安院の指摘を拒否していたことや、担当者間の具体的なやりとりが明らかになったのは初めて。
 公開されたのは名倉繁樹保安院安全審査官(現原子力規制庁安全審査官)、地震予知連絡会会長だった島崎邦彦・前原子力規制委員会委員長代理ら五人分。公開は昨年九月以降八回目で計二百四十六人になった。
 名倉氏は、〇六年に改定された原発耐震指針に照らした確認作業(耐震バックチェック)で福島第一原発を担当。名倉氏の調書によると、八六九年の「貞観地震」で、宮城県福島県沿岸に及んだ大津波の実態が解明されつつあり、名倉氏は〇九年八月と九月、東電の担当者を保安院に呼び、津波想定の説明を受けた。
 東電の担当者は「津波の高さは海抜八メートル程度で、高さ十メートルの敷地を越えない」などと説明したが、高さ四メートルの地盤上に重要な冷却用ポンプがあるため、名倉氏は「ポンプはだめだな」と判断。「こういった結果が出るのであれば、具体的な対応を検討した方がよい」と速やかな対応を求めたが、東電は〇九年六月に、原発津波評価手法を策定する土木学会に対し、一二年三月の回答期限で津波評価の検討を要請済み。「土木学会の検討を待ちます」と拒否した。
 名倉氏はさらに、浸水の恐れがあるポンプを建物内に設置し、水が入らないよう防水対策の検討を要請。東電は「会社として判断できない」「(原子)炉を(保安院が)止めることができるんですか」などと強く反発し応じなかったという。
 大津波の危険性を〇二年の政府機関報告書で警告していた島崎氏は調書で、対策が進まなかったのは「中央防災会議が(報告書の内容を)否定したから」と指摘。「中央防災会議には土木学会と同じ委員がたくさんいた」と述べ、防災会議と土木学会、電力業界は同じ考え方だったとした。

中日懇話会
第484回 安保法案 違憲なら意味ない 河野洋平衆院議長講演要旨
2015/7/30
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 河野洋平衆院議長が29日、第484回中日懇話会で講演した。講演要旨は次の通り。
 【参議院の定数是正】
 10増10減の定数是正法案は、ほとんど有権者の前で審議されず、密室で合意された。定数法案は1票の格差に関わる重要な法案。こんな有権者を無視した話はない。また2つの県を1つにした合区案も、もっと議論すべきだ。合区によって地域の社会、文化、経済がどうなるのか、何も議論せずに、数合わせで決めたような印象だ。
 【安全保障関連法案】
 安全保障は非常に大事だが、この法案が違憲じゃないかとの疑念が、憲法学者をはじめ多くの人から寄せられている。法案が合憲だという合意ができなかったら議論しても意味がない。政府は1度法案をひっこめ、みんなが基本的に合憲だと認める案の上に、安全保障政策を議論すべきだ。
 私の思う日本の平和主義は、例えば非核3原則や武器輸出3原則といったもの。これらの中心に憲法9条がある。世界では、危険な地域で活動する日本人は少なくないが、そういう人たちを守ってきたのは、日本の平和主義。それをなぜやめるのか、私には理解できない。
 【従軍慰安婦問題】
 従軍慰安婦とされた女性たちは、総じて本人の意思に反し、甘言などでだまされ連れてこられた。慰安所に入れられた瞬間から帰ることができない。1日に何人もの相手をさせられ、拒否することができない。
 物理的ではなくても、強制的に、断ることができない状況で連れていく。河野談話を発表した当時の記者会見では、そういう広義の強制性を含む意味で強制連行と申し上げた。また、インドネシアではオランダ人女性を物理的に強制して慰安婦にさせる狭い意味での強制連行の事案があった。
 問題の本質は強制性の定義ではなく、女性たちにひどいことをしてしまったという人権問題だ。事実を認めて心から謝罪し、できるだけのことをするのが当然。「他の国でもあった」とか「大したことじゃない」などと、言えば言うほど、日本の誇りをどんどんおとしめてしまう。

中日懇話会
第485回 弱者救う経済政策を 浜矩子教授が講演
2015/8/29 紙面から
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 第485回中日懇話会(中日新聞社主宰)が28日、名古屋市内のホテルであり、同志社大大学院の浜矩子(のりこ)教授(63)が「これからどうなるグローバル経済と日本〜明日をどう読む〜」と題して講演した。浜教授は「経済政策は本来、人を幸せにするために行われるものだ」と説き、安倍政権の経済政策を「経済のバランスを崩し弱者を不幸にしている」と批判した。講演要旨は以下の通り。
 【取り戻したがり病】
 2012年に誕生した安倍政権は「日本を取り戻す」というスローガンを掲げた。世界を見渡すと、大イスラム圏を取り戻すために手段を選ばない過激派組織「イスラム国」(IS)、帝政ロシアの復活を目指すプーチン大統領、求心力を取り戻そうとする米国民など、さまざまな人が「取り戻したがり病」にかかっている。
 症状が最も深刻なのが安倍晋三首相だ。強い経済を取り戻せば、強い日本、誇りある日本を取り戻せると考えている。完全に戦前の富国強兵路線と一致する。
 【経済政策の意義】
 安倍首相は4月、米国で「私の経済政策は外交安全保障政策と表裏一体だ」と演説した。これを絶対に容認してはならない。経済政策は本来、不均衡を是正して弱者を救済するために行われる。政治が外交や安全保障の目的で経済政策を振り回せば、経済の本来のバランスは崩れ、人々は痛み苦しむことになる。現在の日本経済は成熟している。経済成長は必ずしも求められていない。豊かさの中にある貧困問題を解消することが重要で、日本経済に好循環を生み出したいなら、格差の是正に焦点を当てるべきだ。
 【経済合理性】
 「経済合理性の観点から原発再稼働もやむなし」などと言うのは誤りだ。人権を侵害したり、人を不幸にしたりする経済合理性はありえない。言葉の本来の意味に立ち返ってほしい。
 経済活動は人の欲で前に進む。「もっともうけたい」という思いは経済の活力を生む。ただし、社会規範や倫理の枠を超えないようなバランス感覚も必要だ。異なる意見を聞く耳、人の痛みに共感して涙する目、弱者に差し伸べられる手を持つことが求められる。