トランプ政策、ISに「復活の好機」もたらす可能性

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焦点:トランプ政策、ISに「復活の好機」もたらす可能性
ロイター

Samia Nakhoul
ベイルート 8日 ロイター] - トランプ米大統領は、いまや衰退期にある過激派組織「イスラム国(IS)」の壊滅を誓っているが、イスラム主義の専門家や一部のアナリストは、大統領の行動が新たなIS志願者を生み出し、米国での攻撃を刺激することによって、逆効果をもたらすリスクがあると警鐘を鳴らす。
ISはここ数カ月、戦闘における敗北続きで、イラク、シリア、リビアで支配地域を失いつつあり、資金力や実戦部隊の規模も減少するなど、目に見えて弱体化している。
イスラム過激主義」を根絶するというトランプ大統領の宣言は、一見すると、ISの成功確率に対して、新たな一撃を加えたかのように見えるが、中東問題専門家やIS支持者によれば、トランプ大統領の誕生によって、ISが再び上昇機運を取り戻す可能性があるという。
大統領が先月、難民やイスラム圏7カ国からの入国を制限する措置を講じたことも、ISにとって有利に働く可能性がある。
この大統領令についてISは沈黙を守っているが、米司法により執行が差し止められたことで、混乱が生じている。また、この入国制限が復活するか否かにかかわらず、この大統領令は世界中のムスリムを怒らせた。なぜなら、トランプ氏は否定しているが、彼の政権が「反イスラム的」だということの証拠だと受けとめているからだ。
この点についてホワイトハウスにコメントを求めたが、回答は得られなかった。ただ先週、スパイサー大統領報道官は、こう述べている。「大統領の最優先目標は、常に米国の安全に集中することであり、宗教ではない。彼は、これが宗教の問題ではないことを理解している」
同報道官は、大統領令が米国の安全を低下させるとの見方を否定し、「一部の人は大統領令の内容を正確に読まず、見当違いのメディア報道を通じて読んでいる」と述べた。
だがこうした発言は、批判を押さえ込むまでには至っていない。
イスラム圏諸国からの入国制限は、確実に、過激主義者の信用を落とそうとする世界的な取り組みを損なう」と、イスラム過激主義やISについての著作もあるハサン・ハサン氏は指摘する。
57の加盟国で構成されるイスラム協力機構(OIC)も、こうした「選別的で差別的な行為は、過激主義者のラディカルな主張を、つけあがらせる結果に終わるだろう」と述べている。
ネット上の交流フォーラムでは、聖戦主義者らが今もトランプ氏の大統領選での勝利を祝福している。
同氏の見解は米国の「真の顔」を示しており、彼の政策が、武装グループの目標でもある「コミュニティの分断」をもたらすという、彼らの考えを裏付けているからだという。
「トランプ氏の当選は、信仰の土地よりも、背徳の土地に存在するあらゆる贅沢を伴う世俗的な生活をわざわざ選んだ、忠誠と貞節を失ったムスリムに対するアラー(神)の恵みだ」。ある聖戦主義者は、イスラム主義ウェブサイトの「アル・ミンバー」にそう投稿した。
<失われた勢い>
ISはここ数カ月、多くの側面で相当に弱体化している。イラクとシリアの一部に創設した自称「カリフ国家(預言者ムハンマドの後継者が始動する国家)」は、住民にきわめて厳格な規則を課しているが、その支配地域は縮小している。
イラクでは、北部の重要拠点であるモスルやその周辺で支配地域を失っている。米国の支援を受けたイラク軍が、2003年にサダム・フセイン体制を打倒した米軍の侵攻以来となる、イラク国内で最大規模の地上作戦を昨年10月に開始しているからだ。
ISに幻滅したスンニ派住民のなかには、イラク軍に協力し、ISとの戦いを支援する者が増えており、ISの資金源も大きな打撃を受けている。トルコも国境を封鎖し、ISへの外国人戦闘員の流入やその他の物品の密輸入を拒絶している。
イラク国内におけるISの活動範囲はもっぱら北部に集中しているものの、依然としてモスル西方のタルアファルなどの重要な拠点を保持している。それでもイラクのアバディ首相は、4月までにISをイラク領内から駆逐できると自信をのぞかせている。
ISは引き続きシリア領内で帯状の地域を支配しており、シリアで首都と称する北部ラッカにおいても頑強な抵抗を続けている。ラッカに隣接するイラク国境に近いデリゾール県の約9割を保持しており、シリア北部の都市アレッポの東側郊外の一部も支配している。またパルミラや南部のダルアー県でも数カ所を局地的に支配している。
シリアでISに敵対しているのは、トルコ軍やアレッポ北西部のシリア反体制派グループなどだ。複数の戦線でロシア空軍が支援するシリア政府軍、そしてイランの支援を受けるシーア派武装勢力とも戦っている。シリアのアサド大統領は、ISに対するトランプ氏の見解には期待が持てると語っている。
リビアでは、地中海に面した港湾都市スルトの支配権を、米軍の空爆支援を受けたリビア軍部隊に奪われた。


この敗北によりISは北アフリカにおける主要な拠点を失った。ただしリビア国内の他の部分では活発な行動を続けている。
アナリストや専門家の推計では、イラク及びシリアにおけるISの戦闘員数は現在2万人。2014年には3万6000人だったが、その後、多数の戦闘員や指揮官が米国主導の有志連合による空爆で殺害された。他にも、イラク軍によって捕虜になったり、あるいは国外逃亡したりした者もいる。
<米国への攻撃を画策か>
こうした後退にもかかわらず、ISは激しい抵抗を続けており、米国をはじめとする西側同盟諸国にとって深刻な脅威であることに変わりはない。
ISはすでに、カリフ国家に代えて、シリアやイラクの村落地域における反乱、欧州におけるテロ攻撃の実施、中東からトルコ、エジプトに至る地域の西側の同盟国に対する攻撃など、きわめて危険な選択肢に取り組み始めている。
そして今や、イスラム主義に関する専門家のなかには、ISが米国における攻撃に向けた取り組みを強化しており、過去15カ月にパリ、ブリュッセル、ニース、ベルリン、イスタンブールで実行されたような攻撃を同国で再現しようとしているとの見方が浮上している。
かつての過激派組織アルカイダと同様、ISは以前より、西側諸国はムスリムに対する根深い敵意を持っていると主張。この10年間、こうした論法が1つの要因となって、中東などの地域において彼らの主張に耳を傾ける過激な聴衆が増えてきた。
トランプ大統領の政策によって、聖戦主義者たちは非常に動きやすくなるだろう、とジョージワシントン大学で過激主義研究プログラムの研究員を務めるモクタール・アワッド氏は予想する。
「彼らは単に(攻撃に向けた)戦略に『倍賭け』していき、彼らの戦場にすべてを投資する代わりに、さまざまな中東・西側諸国における下部組織を活性化させるよう、これまで以上に努力するだろう」と同氏は言う。
「米国での攻撃は、それが恐ろしいものであればあるほど、トランプ大統領の弱さを示すという点で完璧な方法となるし、米新政権の一部が持っているであろう、きわめて排外的な外国人嫌悪の姿勢を強めることになる」と語った。
<コミュニティの不信感を煽る>
ISの戦略の大きな狙いは、社会を分断し、ムスリム住民への不信感を引き起こすことだ。たとえ、ムスリムがISに参加しなくても、社会が分断されていれば、彼らが武装勢力に反対する傾向が弱まるとISは考えていると専門家は言う。

どうすれば現時点のIS支持者にとって、この組織を無意味な存在にしてしまえるのか──。こうした「政治的な闘い」が、IS打倒を目指す者にとって、最も緊急を要することだとアナリストは分析する。
先月20日に就任したトランプ大統領の下で、米国政府は「中東においてISと戦うパートナーを求めている」というシグナルを送っている。
イラクにおけるモスル攻略作戦の最前線では、米軍部隊とイランは、同盟とまでは言わないまでも、協調した作戦行動を取っている。米国への入国制限令が復活するようなことがあれば、シーア派優位のイラク政府に対するイランの影響力が増すだろう。
シリアのラッカ包囲においては、米軍はクルド人武装勢力に頼っている。だが、これは北大西洋条約機構NATO)の同盟国であるトルコの怒りを買っている。トルコから見れば、シリアのクルド人武装勢力は、同国がテロリストとみなすトルコ国内のクルド人反体制派と変わりないからだ。米国と欧州連合も、トルコのクルド人反体制派をテログループに認定している。
ロシアのプーチン大統領に対するトランプ大統領の提案からすると、両国はISとの戦いにおける協力関係を強める可能性があるが、それぞれが抱える目標も、それぞれが連携する友好国も、両国のあいだには大きな隔たりがある。
新たな米ロ関係が生まれることも、ISにとっては好機となる可能性がある。アナリストによれば、ISはすでに、ロシアがシーア派のイランと提携したことも、戦闘員募集のための新たな材料だと考えている。一部のムスリムのあいだで大きな怒りを生んでいるからだ。
(翻訳:エァクレーレン)

■ 政治
マイケル・フリン補佐官、就任24日目で辞任
My Big Apple NY

Flynn, Trump’s National Security Advisor Resigns Over Russian Contacts.
異例尽くしのトランプ政権で、また未曾有の事態が襲いました。
マイケル・フリン米大統領補佐官(国土安全保障担当)が13日夜、辞任したとのニュースが飛び込んできたのです。就任24日目で政権を去る補佐官としては、少なくとも戦後では最短記録に。トランプ政権発足前の2016年12月、ロシアの駐米大使であるセルゲイ・キャリスク氏と対ロ制裁解除について電話で協議した疑惑が持ち上がったためです。民間人が米国政府を代表し、外交交渉や介入を行うことを禁じるローガン法に抵触した疑惑が浮上しました。さらには対ロ制裁に関し協議しなかったと虚偽の説明を行ったとされ、最悪の場合は米連邦捜査局(FBI)が刑事告訴しかねません。
フリン氏は就任以前から問題を抱え、当時トランプ政権チーム入りしていた息子によるピザゲートは大騒動となりました。同名である息子はワシントンD.C.郊外のピザ店“コメット・ピンポン”が児童売春組織の拠点で、クリントン民主党大統領候補の側近だったポデスタ選対委員長が関与しているとの偽ニュースをツイート。拡散した偽情報を元に、半自動銃で武装した男性が店舗へ押しかけ発砲する事件が発生したものです。結局、縁故で政権チーム入りした息子は辞任と相成りました。
事実上、辞任に追い込んだ人物こそ入国禁止令で反発しトランプ米大統領に更迭されたサリー・イエーツ前司法長官代行その人。解任前の1月、ホワイトハウスに対し「ロシア当局者との協議内容に矛盾があり・・フリン氏は恐喝に弱い」と警告を放ったといい、その内容が報じられた直後の辞任劇となります。
RT(ロシア・タイムズ)は、フリン補佐官が「retire(引退)」したと報道後、削除。

(出所:Twitter via The Guardian)
後任には陸軍中将を務めた経験を持ち、国家安全保障会議NSC)の事務局長として政権入りしたキース・ケロッグ氏(72歳)が就任します。同氏はベトナム戦争に従軍し、2003年には連合国暫定当局からイラク政府への政権移行を進める過程で最高作戦責任者を務めました。アメリカ統合参謀本部の統合参謀本部の指揮・統制・通信・コンピューター部長を経験。2003年に退役した後はソフトウェア大手オラクルでの勤務を経て、2005年には国防総省と契約する情報技術会社CACIインターナショナルのエクゼクティブ・バイスプレジデントに着任。2016年3月からは、米大統領選を戦うトランプ氏の外交政策アドバイザーに指名されました。
フリン氏と言えばトランプ米大統領がドル高とドル安のどちらが有益か午前3時に電話を掛け尋ねたエピソードがあり、側近中の側近といった印象でした。そのフリン氏に代わる補佐官はケロッグ氏なのか、あるいは別の人物を着任させるのか。