オバマは現代のケネディでした

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オバマ大統領「退任演説」、称賛すべき5つの理由とは

フォーブス ジャパン

言葉は私たちを動かす力を持ち、鼓舞する力を持ち、団結させる力を持つ─

バラク・オバマ米大統領は1月10日、地元シカゴで任期中最後の演説を行った。

重要な事柄に関する重大な、そして思慮に富んだその演説から、私たちは次の5つの点に関する重要性を学ぶことができる。


1. 笑顔を見せる

オバマ大統領は穏やかな笑みを満面にたたえ、さっそうとした足取りで登場、会場内全体を見回して聴衆とアイコンタクトを取った。研究結果によれば、スピーカーに対する聴衆の印象を決定付けるのは、最初の言葉を発する前、登壇からわずか数秒の間だという。

2. ユーモアを持つ

登場した大統領に対する拍手喝采は、なかなか鳴りやまなかった。オバマは笑顔で「テレビで生中継されているのだから、早く演説を始めなくては」と言ったが、それでも聴衆は席に着こうとしなかった。
「やはり私はレームダック(死に体)だね。誰も言うことを聞いてくれない」というオバマの言葉で、聴衆は笑い、ようやく着席した。

3. 自分に置き換える

素晴らしい演説には、聴衆に希望を持たせるような言葉がいくつも使われる。また、スピーカーの個人的な話も含まれる。大統領はこの日の演説の始めに、自らの過去を振り返ってこう語った。
「シカゴにやってきたとき、私はまだ20代前半で、自分自身がどのような人間なのか模索しているところだった。人生の目標を探していた…」
聴衆が最も大きな拍手を送った(そして、オバマが目に涙を浮かべた)のは、演説の後半、ミシェル夫人に心からの感謝の言葉を贈ったときだった。
「(シカゴの)サウスサイド出身のミシェル・ラヴォーン・ロビンソン…この25年間、あなたは私の妻であり、私の子供たちの母親であっただけでなく、私の一番の味方だった…ホワイトハウスを全ての人たちのものにしてくれた」

4. 技巧の活用

バラク・オバマの存在を全米に知らしめた2004年の民主党全国大会での演説から大統領としての最後の演説まで、オバマは伝統的な修辞的技巧を使いこなしてきた。この修辞技法は、コミュニケーションの力を反映するものだ。この技法が使われた次のような部分で聴衆が特に大きな拍手を送ったのは、偶然ではない。

・「首句反復」─文章の最初の言葉や句を繰り返すことで、その部分を強調する

「8年前にもし私が、米国は経済危機から脱し、自動車産業を復活させ、…と言ったら、もし私が、キューバの人々との間で新たなページを開き、一発の銃弾も発射することなくイランの核兵器開発を停止させ、…と言ったら、もし私が、結婚の平等を認めさせ、2,000万の米国民に新たに医療保険に加入する権利を保証すると言ったら。

もし私がこれらの全てを伝えたら、皆さんは私たちの目標が少し高すぎると言っていただろう」
・「三の法則」

オバマは段落や文の中で、「三の法則」(古代ギリシャで「トリコーロン」と呼ばれた技法)を用いる。

コミュニケーションにおいて「3」は最も大きな力を持つ数字の一つだ。

「米国は依然として、世界で最も豊かで、最も強い力を持ち、最も尊敬を集めている国だ」

(「最も」に続く言葉が徐々に増えるところが、非常に有効な点だ)

「皆さんは公平で、公正で、包括的なアメリカを信じている」

「Yes, we can.」

5. 身振りで伝える

オバマは自分の発した言葉を強調するために、力強く明快なジェスチャーを使う。

そのとき、両手は腰よりも高い位置にある。

目的を持った力強い身振りが伴わなければ、力強い言葉も聴衆には伝わらないだろう。

大統領として米国民に向けたオバマの最後の演説には、言葉、文章の構成、話し方、ジェスチャー、演説者個人の経験、これら全てがそろっていた。

米国大統領の演説はわずかの間ながら、国民を一つにし、高揚させる。

それは、称賛に値するものだ。
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オバマのサプライズに副大統領感激の涙:

?大勲位?大統領自由勲章を受章
ローリングストーン日本版

(Photo by Olivier Douliery-Pool/Getty Images)

オバマ大統領は副大統領への敬意を示すと共に、文民最高位の栄誉を贈った。

バラク・オバマはサプライズで、副大統領のジョー・バイデン文民に与えられる最高位の大統領自由勲章を授与した。

まさかのサプライズだった。

バラク・オバマ大統領は、副大統領を務めたジョー・バイデンの功績を称えるセレモニーの席上で、文民に贈られる最高位の大統領自由勲章をバイデンに授与した。

オバマ大統領が文民最高位の勲章をバイデンに贈ると口にした瞬間、バイデンは呆然と立ちつくした。

やがて集まった人々に背を向け、ポケットからハンカチを取り出して溢れる涙を拭った。

オバマからのサプライズはそれだけではなかった。

オバマの大統領在職中で初めて、自由勲章の中でも特別な?大勲位(With Distinction)?をバイデンに贈ったのだった。

過去3代の大統領時代を振り返っても、この栄誉を受けたのは

ヨハネ・パウロ二世、ロナルド・レーガン元大統領、コリン・パウエル国務長官

のわずか3名だけである。

約50年間に渡り国のために尽くしたバイデンの功績を、補佐官が読み上げた。

「彼の人を惹きつける力、実直さ、何があっても動じない態度、永遠に続く深い愛国心を持つジョー・バイデンは、政党の垣根を超えて誰からも尊敬され、国内のみならず世界へと友好の輪を広げた」。

2008年、オバマとバイデンは大統領選挙の民主党候補の席を争ったが、オバマの副大統領候補となってから2人は無二の親友となり、後に揃ってホワイトハウス入りすることとなる。

2人の絆の強さと仲の良さは特別で、ネット上でよくネタにされるほどだった。

送別のスピーチでオバマは、

ジョー・バイデンペンシルベニア州スクラントンの悪ガキがデラウェアの優等生に成長した。大統領候補となった私がパートナーとして選んだのがあなたで、それは最初で最高の選択だった。あなたは最高の副大統領というだけでなく、私の兄弟でもあった。私はあなたとジル夫人を家族のように愛している。あなたの友情は我々の人生の宝だ」。

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「涙が止まらない」オバマ氏のさよならスピーチ、なぜ人々の心を強く打ったのか?

NewSphere

 20日に8年の任期を満了し退任するアメリカのオバマ大統領が、10日の夜(日本時間11日午前)に最後の演説を行った。

自身の功績に言及するとともに、民主主義と多様性の大切さを訴えた力強いスピーチだった。

演説の最後には、家族や副大統領への感謝の気持ちも表し、涙を拭く大統領の姿にもらい泣きする人々が続出した。

聞く者の感情を揺さぶる大統領のお別れの挨拶は、まさに

全米が泣いた」珠玉の演説となったようだ。

◆大統領、家族の涙に、視聴者もうるうる  ウェブ誌『クウォーツ』は、オバマ大統領の演説はいくぶんアカデミックな調子で始まったものの、最後には聞く人に語りかけるような広がりを見せ、その場の聴衆やテレビの視聴者を涙させた、と述べている。

 各メディアとも、特に感動を誘ったのは、大統領が家族とバイデン副大統領に感謝を述べた場面だったとしている。

大統領が、ミシェル夫人を25年来の「親友」と呼び、「自分が求めたわけではない役目を引き受け、思いやりと勇気と品位とユーモアでやり遂げてくれた」と涙を拭きながら語ると、長女のマリアさんは涙し、2万5000人の聴衆も、夫人にスタンディングオベーションを送った。

子供達には、「人生において一番の誇りは、君たちの父親であることだ」と述べており、クウォーツは、この言葉が多くの親たちの目を潤ませたと述べている。

8年間苦楽をともにしたバイデン副大統領については、「兄弟を得た」と述べ、こちらも見る者の涙を誘ったようだ。

SNSにも、涙のメッセージ。

ジャーナリストも泣いた

 Cox Mediaによれば、演説を視聴した人々からツイッターに、
「あたし、すでに泣いてる…。大統領、愛してる」、「バラクも、ミシェルも、マリアも、あたしも泣いてる」、「イエス、ウィーキャン。ありがとう、ありがとう、ありがとう」などのツイートが寄せられたという。

ホワイトハウスフェイスブックにも、数千人から「心が痛む」といった感情をこめたメッセージが寄せられ、多くの人々がオバマ大統領の退任を悲しんでいたようだ(クウォーツ)。

 涙したのは一般市民だけではない。

米ニュースサイト、バズフィードのジャーナリストたちも、

「こんなに泣いたの、ビヨンセのツアー以来」、「いつになったら涙が止まるの」、「すんごい悲しい」、「これ、今までの連続もののテレビ番組で最も悲しい最終回」

などとツイート。

なんとバズフィード社の公式ツイッターアカウントまで、「同じく」とつぶやいた。

ちなみに、ビジネス・インサイダー誌によれば、ジャーナリストは政治的意見を公の場で表現することは控えるというのが業界の常識で、バズフィード社の倫理ガイドでも「レポーターや編集者は、候補者や政策課題について一方に偏ってコメントすることを控えるべき」とされている。

抵触するかどうかはさておき、感動はジャーナリストたちを止められなかったようだ。

◆トランプ政権への不安も涙の原因?

 オバマ大統領の退任演説が涙を誘った最大の理由は、なんといってもその家族愛だが、別の理由として、トランプ次期大統領がオバマ大統領と対照的であることが上げられている。

クウォーツは、8年間セックス・スキャンダルが一切なかったオバマ大統領とその家族が、

下品なスキャンダルまみれのトランプ氏に道を譲ることに人々が不安を感じたことが影響したのでは、と述べている。

 ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、チャールズ・M・ブロー氏も、人々は退任演説で、オバマ大統領を失うことの重大さに気づいたと述べ、功績への評価は分かれるが、オバマ大統領は賢く歴史に名を残す雄弁家で、威厳と敬意をもって行動するリーダーだったとし、よき人、よき大統領であったと述べる。

そしてトランプ氏が大統領になり、スキャンダル、争い、粗雑さ、がさつさ、執念深さをワシントンにもたらした後に、オバマ大統領のよさを皆が思い出すだろうと述べている。

 クウォーツは、

8年前の多様性と寛容さを目指した社会から今のアメリカは深く醜く分断されてしまったこと、

また、オバマ大統領を何としてでも成功させたくないという反対派のおかげで、

政党間での協調性が失われ、政治のプロセスが根底から壊れたように見えることも不安の涙につながったと見ている。

その一方で、オバマ大統領が演説の中で20回も「民主主義」という言葉を使い、国民、とくに若い世代に向け、「民主主義をさらに進展させて」と最後に希望を語ったことで感動の涙が広がった、と説明している。

(山川真智子)