日本の終焉近し

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低い投票率続きでは自公政権を揺さぶれない
団藤保晴

参院選民主党から党名を変えた民進に多少は復調の気配は見えましたが、自公政権に揺るぎはありません。政権交代があった2009年総選挙から国政選を並べると投票率の低下が著しく変動を起こす票が足りないのです。現政権への評価が高いのではなく、政権交代しても、ほとんど業績をあげられなかった民主党政権への失望がまだまだ尾を引いています。


 NHK調査の政党支持率比例区での党派得票率を対比して、2009総選挙から2010参院選、2012総選挙、2013参院選、2016参院選と並べました。政党支持で目につくのは今回、無党派層が44.2%とかつて無い多さになっている点です。改憲の自民から離れる層があり、民進は民主の時代からの低迷を脱せず、維新の分裂もあって行き場がない無党派層が膨張しました。

 党派別得票率では自民35.9%・公明13.5%が3年前と変わらぬ強さを見せます。一方、民進が21.0%と前回13.8%のどん底を脱して上向き、共産は10.7%と国政選で着実に積み上げています。政党支持率以上の票積み上げに政権批判のトーンが読み取れます。

 朝日新聞の《参院選、「野党に魅力なかった」71% 朝日世論調査》は選挙結果について2択で質問し、 《「安倍首相の政策が評価されたから」は15%で、「野党に魅力がなかったから」が71%に及んだ》 と伝えました。この2択が適切か議論があるでしょうが、低投票率は説明されています。

 東京での復調を開票途中に『参院選速報、東京では民進党自民党を逆転か』で伝えましたが、結局、東京の比例区得票率は自民34.4%に対して民進19.8%に終わりました。個人票で蓮舫候補の人気が高かった結果になっています。

1年半前に第461回「IMFは『失われた30年』認定、首相の強気は虚構」で紹介したようにアベノミクスは国際的には虚構に近いものです。最近の経済変動以前に馬脚は現れていました。しかし、そのアベノミクスに代わる経済政策を打ち出せない野党ではどうにもなりません。マスメディアも小手先の批判をするばかりでなく、本格的な政策提言が出来る体質に進まねばなりません。

 軍事力を捨てた戦後の日本が歩んできた科学技術立国の歩みが崩壊しつつあるのは第500回「大学ランク退潮は文科省が招いた研究低迷から」など一連の検証記事で明白にしました。この十年、知的な営みを象徴する論文数が減少し、人口当たりで見れば東欧の小国にも抜かれてどうするのかです。トップクラス大学だけ育てれば世界に勝てる――自公政権の恐るべき錯誤をマスメディアはきちんと批判できません。

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■ 政治
憲法を守る知事か壊す知事か/7・31 都知事
しんぶん赤旗

 31日投票の東京都知事選挙は、参院選の結果、衆参両院で改憲勢力が3分の2を占めるとともに、憲法違反の安保法制=戦争法の発動の危険も迫るなかでの首都決戦です。首都東京で、憲法を守り生かす知事を誕生させるのか、それとも安倍首相と一体となって憲法を壊す知事を許すのかが、大きく問われます。
立憲主義破壊ただす力
 いち早く名乗りを上げた小池百合子氏は、自民党内で一貫して「自主憲法制定」を主張してきた改憲タカ派。一方、増田寛也総務相は、戦争法で立憲主義を破壊し、さらに明文改憲を企てる自民・公明両党の推薦を受ける候補です。
 これに対し、「(参院選の結果)憲法改正が射程に入った。時代の流れが変わり始めている。元に戻す力になりたい」と述べて立候補表明(12日)したのが、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏。日本記者クラブでの共同記者会見(13日)では、安倍晋三首相の改憲姿勢をあげ「戦後最悪の内閣だ」と指摘。自民党改憲案を厳しく批判しました。
 市民の中からも、都知事選挙の争点は憲法問題だという声が上がっています。
 「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)は16日、「野党統一候補鳥越俊太郎氏と市民がつくる都政の実現へ」との声明を発表。「衆参両院において改憲勢力が3分の2以上の議席を獲得している現在、立憲主義と平和主義と民主主義を回復し、個人の尊厳を擁護する政治を首都・東京において実現することは、日本の将来において決定的に重要です」と述べています。
 ところが小池氏は「憲法問題は自民党で議論されている流れでいい」(13日の共同会見)と自民党改憲案をほめ、増田氏は、「今問われているのは知事選、憲法の問題をそこに持ち込むのはどうか」(同)と争点化を避ける姿勢です。
 しかし、「都政の原点は、都民の命を守る、暮らしと命を守るというところにあります。この点で憲法問題は大争点」(日本共産党志位和夫委員長、14日の会見)です。
 そもそも日本国憲法の定める「地方自治」の原点は、住民の命と暮らしを守ることであり、戦前のような中央集権を排し、平和と自由を守るために政府の動きに抑制をかけることにあります。住民の直接的な政治参加で、民主主義を発揚することも重要な役割です。
 安倍政権による立憲主義破壊の暴走が強まるもと、都知事選挙憲法を論ずることはとても重要な課題です。
戦争法、住民動員の危険
 安倍政権が昨年9月に強行した戦争法は、地方自治体や住民を、戦争へと動員し、戦争体制に組み込む危険をいっそう高めるものとなっています。

 2004年につくられた国民保護法制は、米国の戦争に自衛隊が協力し、自衛隊が相手国の攻撃の対象となる場合(武力攻撃予測事態)に、地方自治体や住民を政府の軍事方針に従って動かすことを狙いとするものです。「指定公共機関」として、電気、ガス、放送事業者や日本赤十字などの医療機関も動員の対象です。「テロの危険」(緊急対処事態)にも発動されます。
 そのもとで、空港(羽田空港など)や港湾(東京湾周辺など)の米軍による優先使用が認められ、自衛隊による強制使用も可能とされます。
 地方自治体と指定公共機関は、政府がつくる「対処基本方針」=軍事方針に沿って国民の「避難」や「救援」の措置を義務付けられます。国民には、物資の保管や道路の通行制限、土地の強制収用やそのための立ち入り検査、警戒区域への立ち入り制限などが強制されます。
 「国民保護」は名目で、米軍主導の軍事作戦の必要に応じて、国民や自治体の動きを規制することに本質があります。
 戦争法で容認された集団的自衛権の行使は、日本が攻撃されていないのに、米国を攻撃する第三国に対し事実上の先制攻撃をすることで、日本に対する武力攻撃の危険を呼び込むものです。政府も「(集団的自衛権行使が認められる)存立危機事態に該当するのに、武力攻撃事態等に該当しないことはまずない」(横畠裕介内閣法制局長官、昨年9月14日、参院安保特別委)と答弁しており、集団的自衛権を行使する多くの場面で、国民保護法が発動される可能性を認めています。憲法違反の戦争法の発動による自治体・国民の動員と統制を許していいのかが問われます。
自民案に緊急事態条項
 さらに重大なのは、安倍首相が改憲項目のひとつとして掲げる、緊急事態条項の創設です。「外部からの武力攻撃」などの緊急事態において、国民保護のための国等の指示に国民は「従わなければならない」と服従義務が規定されています(自民党改憲案99条3項)。
 この規定の狙いについて、『自民党改憲草案Q&A』は、従来の「国民保護法制」では国民の服従義務について「憲法上の根拠がないために、国民への要請は全て『協力を求める』という形でしか規定できなかった」と不満を告白。国民保護法制による国民の動員に広く強制力をもたせ、大幅な人権制約を可能にすることを狙っているのです。