注意点 起用した人物を観れば人事権者がわかる

毎日新聞記事より

A
産科重大事故:リピーター医師の根絶困難 是正制度不十分
2016年12月12日

 愛媛県今治市産婦人科で出産直後の女性の死亡などの重大事故が相次いでいたことが明らかになった。医療事故を繰り返す「リピーター医師」は、重大な医療事故が多発した1999年ごろから問題視されるようになった。厚生労働省は2007年度から行政処分を受けた医師の再教育を義務付けたが、事故の繰り返しは明るみには出にくく、是正制度は十分とはいえない。

 医療事故に備えて医師や医療機関の多くは保険に加入し、開業医には日本医師会が契約する医師賠償責任保険がある。過去の機関誌によると、73〜95年に患者側から100万円を超える損害賠償を2回以上請求された医師は511人に上る。

 厚労省の審議会は02年、刑事事件にならなくても明らかな注意義務違反があった医療ミスを医業停止などの行政処分対象とする方針を示したが、実際に処分したのはわずか2件。ミスの繰り返しを理由としたのは12年の戒告1件だけだ。

 昨年10月から医療事故調査制度が始まり、従来は特定機能病院などに限られていた死亡事故の報告義務が、全ての死亡事故に拡大された。しかし、事故の繰り返しをチェックしたり、外部が是正を求めたりする仕組みにはなっていない。

 一方、日本産婦人科医会は04年から会員に重大事故の報告義務を課し、調査や改善指導する独自制度を作った。年間100〜600件台の報告があるが、報告するかどうかは医師の判断任せで、同医会に業務停止などを命じる権限もない。リピーター医師の排除は難しいのが現状だ。【清水健二】

B 愛媛・産婦人科医:日本医会が改善指導 3年間で2人死亡
2016年12月12日

 出産直後の女性が死亡するなど複数の重大事案が起きた愛媛県今治市産婦人科医院を、日本産婦人科医会の幹部らが11日に訪れて調査を実施し、改善を指導した。医会幹部の立ち入り指導は異例といい、石渡勇・医会常務理事は取材に対し「3年間で死亡事案が2件相次いだことは異常。非常に重く受け止めている」と話している。国内で年間約100万件ある分娩(ぶんべん)の前後に女性が死亡する事故は通常40件程度という。

 医会などによると、同産婦人科は50代の男性医師が1人で診療にあたり、年間130〜140件ほどのお産を手掛けている。「重大医療事故が相次いでいる」という情報が寄せられたことを受け、医会は今年9月、カルテなどの調査に着手。その結果、2009年以降の8年間で2件の死亡事案を含む4件の重大事故が起きていたことが確認された。

 12年には当時30代の女性が出産後に出血が止まらず、市内の県立総合病院への搬送中に死亡。15年には当時30代の別の女性が帝王切開手術後に腹腔(ふくくう)内で大量出血し死亡した。この他、09年に当時30代の女性が麻酔を伴う帝王切開手術の後、脳梗塞(こうそく)になり、半身にまひが残った。16年も出産後の大量出血で当時30代の女性が一時重症となった例があったという。いずれも、生まれた子は無事だった。

 男性医師はこれら4件のうち、15年に起こった死亡事案の概要を医会に報告したのみで、3件については医会に伝えていなかった。医会は詳しい報告を待つスタンスを取り、評価委員会を開くなどの対応はしていなかった。

 医会は11日の調査後、「症状が重篤になる前に別の対応ができた可能性があり、結果的に判断が遅かったことになる」と指摘。血圧や脈拍数などを正確に測ることや、緊急時には速やかに県立病院に搬送する体制を整えることなどを改善点として示した。

 その上で、今後の方針として、来年3月末までに分娩から撤退することを前提に、その後は同産婦人科では34週前後までの妊婦の検診のみ受け付け、分娩は県立の総合病院でしてもらう「セミオープンシステム」を提案した。

 石渡常務理事は「地域の医師間のコミュニケーションが取れておらず、人手不足を補って助け合うことができていなかったことが残念」としている。男性医師は取材に対し「指摘された内容を重く受け止め、改善していかないといけない。提案については前向きに検討する」と述べた。【黒川優、成松秋穂】

? NHK会長人事

中日新聞疑似より

核心
問題発言で孤立無援 NHK籾井会長再任困難
2016/12/3 紙面から

続投に意欲を見せていたNHKの籾井勝人(もみいかつと)会長(73)の再任が厳しくなってきた。NHKの最高意思決定機関で会長の任命権を持つNHK経営委員会(委員長=石原進・JR九州相談役)の委員十二人のうち、放送法で再任に必要とされる九人以上の同意を得るのが極めて困難な情勢のためだ。就任以来、数々の問題発言を繰り返し、批判されてきた籾井会長は孤立無援のままNHKを去る公算が大きくなっている。
■にじむ意欲
 「普通の人は(続投を)やりますかって言われたら、やるって言うんじゃないですか」
 籾井氏は、最近は続投の意思について明言を避けているが、十月の定例会見では、このように意欲をにじませた。
 しかし、籾井氏の再選には早い時期から疑問符が付いていた。
 二〇一四年一月の就任会見では「政府が右というものを左というわけにはいかない」と発言。昨年三月には、私的ゴルフで使用したハイヤーの代金をNHKに請求していたことが発覚するなど、その言動に厳しい批判が集まった。
 経営委は三度にわたり、籾井氏を注意。国会でも問題視され、NHKの予算案が三年連続で全会一致の承認を得られない異例の事態となっていた。
 籾井氏は安倍晋三首相の意向を反映した人事といわれたが、度重なる問題発言・行動で、政権側も距離を置き始めていた。
■続投に布石
 経営委の石原委員長は今年六月、委員の互選で委員長に昇格。三年前の会長選考では籾井氏を推薦した一人とされ、籾井氏に近く、再選もありうると見る向きもあった。
 経営委は七月、次期会長の指名部会を設置。十月には次期会長の選考基準として「政治的中立」「人格高潔であり、説明力に優れ、広く国民から信頼を得られる」など資格要件の五項目を発表し、人選を本格化させた。
 その直後の十一月、籾井氏は突然、来年十月からの受信料値下げを経営委に提案。二〇年に着工予定のNHK放送センター(東京・渋谷)の建て替えに必要な建設費千七百億円のめどが立ったことなどを理由に、籾井氏は「余ったら視聴者に還元すべきだ」と主張した。
 次期会長の人選が進んでいる中での値下げ提案は、続投に向けた籾井氏のパフォーマンスと見られた。
■支持率重視
 経営委は、センター建て替え費用に放送機材費が含まれていないことなどから十一月二十二日、値下げを見送ることを決定。委員の一人は「(受信料が)余ったから下げる、足りないから上げるでは経営がたるむ。長期的な視点が欠けている」と籾井氏の提案を批判した。
 値下げ案は続投への布石ではないかとの声に、籾井氏は「関係ない。そこまで俗っぽくない」と否定したが、この提案によって、逆に新会長を決める経営委との「溝」が深まった。
 新会長人事には安倍政権も関心を持っているとされる。経済ジャーナリストの町田徹さんは「支持率重視の政権は問題発言を繰り返すような人を抱えたくない。騒ぎを大きくせず、首をすげ替えたいのでは」と指摘する。
 籾井会長の任期は三年で来年一月二十四日まで。経営委は今月六日に開く次期会長の指名部会で、各委員が推薦する候補について議論し、年内にも新会長を決める運びになっている。経営委員を登用する案などが取り沙汰されている。

 (東京放送芸能部・砂上麻子)
◆選んだ経営委も猛省を
 <服部孝章・立教大名誉教授の話> 籾井会長は報道機関のトップという自覚やジャーナリズム意識が欠けていた。籾井会長を選んだ経営委はこの間の失言、失態を繰り返させた点を猛省するべきだ。今後、人口が減少し、受信料を支払う世帯の激減が予想される。会長には、経営戦略を含め、将来の課題に対応したグランドデザインが描ける人が望ましい。