アメリカ新旧大統領演説

■ 政治
Yes, We Did!オバマ大統領、感動的なお別れスピーチを披露
ローリングストーン日本版

大統領として最後の感動的なスピーチを行ったバラク・オバマ(Photo by Scott Olson/Getty Images)
バラク・オバマはシカゴで、大統領として最後の感動的なスピーチを行い、心に響く言葉で国民の強い結束を呼びかけた。「我々には、?偉大なる自分たちの国をより良くする努力を続けなければならない?という希望に満ちた使命が課されている」

バラク・オバマは大統領として最後のスピーチを行った。「?国をより良くする努力を続ける?という希望に満ちた使命を果たしていこう」と国民に呼びかけ、心に響く言葉で強い結束を訴えた。さらに「外見は一人ひとり異なるが、我々は全員?国民?という共通の誇り高き肩書を持っている」と述べた。

「もはや誰も指示に従う者のいなくなった今の私は、レームダック(死に体)状態と言えるだろう」。2017年1月10日(現地時間)、大統領への足がかりを掴んだ地元シカゴで熱狂する観衆に迎えられたオバマは、ジョークも交えながら大統領として最後のお別れスピーチを行った。

オバマ大統領は、在職中の8年間に上げたさまざまな功績にも触れながら、発展し続けるアメリカの伝統的な自治の精神に主眼を置いて人々に語りかけた。さらに、テロ、貧富の格差、人種間の不公平、ますます偏向し分裂する政治的展望など、真の平等や正義を妨げるさまざまな脅威への警鐘を鳴らした。

経済的正義に関しては、「子供たち全員に適切な教育を受けさせ、より良い待遇を求める労働組合を結成できるだけの力を労働者に与えられるような社会的仕組み作りが必要で、さらに社会的セーフティ・ネットを整備し、税制改革を推進することで国からの利益を得る企業や個人が果たすべき義務を怠らないようにする工夫も必要だ。それぞれの目標を計画通りに達成するための議論は大切だが、目標を立てるだけで満足してしまってはいけない」。

オバマはこの問題を人種間の平等とも関連付けた。「すべての経済問題が、勤勉な白人中流階級と不当な扱いを受けているマイノリティとの間のせめぎ合いとして括ってしまうと、ひと握りの富裕層がますます潤い、労働者階級は人種にかかわらずおこぼれを巡って争いを繰り広げるという構図が続く」。

さらに、『アラバマ物語(原題:To Kill a Mockingbird)』(ハーパー・リー著)に登場するアティカス・フィンチを引き合いに出し、「真の人種的平等とは、差別撤廃を規定した法律を支持することだけでなく、全ての人種が協力し理解し合うことである」と訴えた。
この問題の解決はハードルが高いということはオバマも承知している。その上、相容れない文化的・政治的なバブルに引きこもりがちな最近の傾向が、この状況をさらに複雑にしている。この問題を打開し、適切な妥協点を見出すためには、「?事実に基づく共通のベースライン?と?新たな情報を受け入れ、相手も公平な立場に立っていると認める許容力?が必要である」と述べている。

オバマはまた、テロ組織や?よその国を仕切る独裁者たち?による外的脅威についても語った。自国の軍隊や情報機関の絶え間ない働きを称えると共に、「テロとの戦いには、民主政治を脅かす外からの侵略に対して国民が立ち向かわなければならない」と説いた。

スピーチの最後にオバマは、自分の家族、スタッフ、ジョー・バイデン副大統領、そしてアメリカ国民に対して感謝の言葉を述べた。ジョージ・ワシントンの辞任挨拶を引用し、民主政治や自治を“慎重かつ積極的に”守るよう、国民に訴えた。

「国民の皆さんには、我が国の独立宣言が掲げた信念をしっかりと持ち続けていただきたい。奴隷や奴隷制度廃止論者たちが密かに伝えた理念。移民や入植者や正義を求めて突き進む人々が掲げた精神。世界中の戦場や月面に旗を立ててきた人々が証明した信念。これからの歴史を作る今を生きる全てのアメリカ国民が心に抱く強い気持ち。?Yes We Can! Yes We Did! Yes We Can!」




Translation by Smokva Tokyo

1【国際】
「チェンジする力信じて」 オバマ米大統領が退任演説
Tweet
2017年1月12日 朝刊
 【ワシントン=石川智規】オバマ米大統領は十日、地元イリノイ州シカゴで、退任演説を行った。二〇〇八年の大統領選で自ら訴えた「チェンジ(変革)」を用いて「大統領として最後のお願いだ。チェンジを起こすのは皆さんの力だと信じてほしい」と強調した。
 二期八年を「イエス・ウィー・ディド(私たちは成し遂げた)」と振り返った上で多様性ある社会の実現や民主主義の発展に向け「イエス・ウィー・キャン(私たちはできる)」と呼び掛けた。
 演説でオバマ氏は民主主義や自由、平等の重要性を繰り返し説いた。任期中には人種差別撤廃や「核兵器なき世界」といった高い理想を掲げたものの、現実には格差が拡大し疲弊した社会で人種などによる分断が深化。トランプ次期大統領を生む一因となったが、自省の言葉は少なかった。
 オバマ氏は、移民を受け入れ多様性を保ってきた歴史が「米国を豊かで強くした」と強調。「移民の子供を大切にしなければ、私たちの子供の未来も損なう」と述べ、トランプ氏が訴える不法移民の強制退去など排他的な政策を牽制(けんせい)した。
 また、憲法が保障する民主主義などについて「当然あるものとみなせば存在が脅かされる」と指摘。「私たちが政治に参加し責任ある選択をしなければ憲法はただの紙になる」と警鐘を鳴らした。
 任期中の政策としてリーマン・ショックによる大不況からの脱却や医療保険制度改革オバマケア)、イラン核合意などを挙げつつ「皆さんの希望が答えを出してくれた。皆さんこそチェンジそのものだ」と謝意を表明。自ら合意を働きかけた地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」を念頭に、「気候変動問題を否定することは次世代への裏切りだ」と断言し、オバマ氏のレガシー(政治的遺産)を覆そうとするトランプ氏に再考を促した。
 退任前の歴代大統領は通常ホワイトハウスでお別れ演説を行うが、オバマ氏は自身の市民活動の原点であり大統領選の勝利演説も行ったシカゴを選択。妻ミシェルさんや娘に感謝の言葉を述べる時、涙を拭った。

2 【国際】
トランプ氏「雇用生む」 米大統領当選後、初会見
Tweet
2017年1月12日 朝刊
 【ニューヨーク=後藤孝好】トランプ次期米大統領は十一日(日本時間十二日未明)にニューヨークのトランプタワーで、記者会見を開き、「最も多くの雇用を生み出す大統領になる」と抱負を述べた。米自動車大手フォードがメキシコでの工場建設を取りやめたことなどに触れ「多くの企業が米国に戻ってきている」と指摘した。
 トランプ氏が自分の私生活に関する不利な情報をロシアに握られているとの米メディアの報道について「ナンセンスが広まろうとしている」と不快感を示し、「恐らく情報機関が流した」と批判した。ロシアとの関係については「プーチン大統領が私を好きなのは強みだ」と述べた。
 ただ、米大統領選へのサイバー攻撃について「(背後にいるのは)ロシアだと思う」と語った。
 国内外で幅広く展開しているホテルやカジノなどの事業は大統領就任後、利益誘導を疑われると指摘されており会見でトランプ氏の弁護士が「二人の息子に経営を譲る」と明らかにした。
 今回の会見では、米国第一主義に基づいて雇用を創出するための経済政策や、中東での過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討に向けた外交政策など、就任後に最優先で取り組むとしていた項目についての詳細な言及はなかった。
 主要メディアを批判するトランプ氏は、ツイッターで頻繁に個人や企業への攻撃を続けて世界に波紋を広げているが、単独での記者会見は昨年七月二十七日以来、約五カ月半ぶり。